IT農業の導入で4時間の水やり時間を削減し、規模拡大を実現

「作物への水やりに半日近くとられている……」

「本当は別の仕事がしたいのに、水やりでなかなか集中できない……」

そんなことはありませんか?

熊本県の南阿蘇村で、トマトとイチゴを栽培する山中大輔さんもそのような悩みを抱える1人でした。新規就農のために移住し、農業を始めてから11年が経ちました。

ITシステム導入前は、朝の4時間近くを水やりにとられ、その上、時間を掛けても1日に水を1、2回しかあげられない。そんな中、山中さんはITを活用することで、収量を安定させることに成功しました。水と肥料を自動で供給してくれるシステムを導入したのです。

ITを活用したことで、次に大切な管理の仕事に時間を使えるようになったと言います。作業が止まらないように、スタッフさんの次の動きを考えるのに大きく時間を割くことができるようになったそうです。

ITシステムを使った農業とはどんなものなのか。山中さんに伺いました。

 

師匠について「うろんころん」ー地域にとけこむためはまず「聞き込み」

 

ー移住して就農されたと伺いましたが、農業に興味を持ったきっかけは何でしたか。

九州東海大学の農学部だったので、農家を目指すようになりました。ただ、当時はなかなか新規就農できる制度がなかった。それで、6年間で農業法人を3か所ぐらい回って修行したんです。6年目に今の私のお師匠さんに出会って、農家として独立しました。

ー新規で就農するには、お師匠さんのような人がいないとなかなか難しいですか。

そうですね。土地を借りるときには、後見人が必要です。後見人が顔の効く人であれば、「あの人のところに来ているのなら安心だね」というような安心感ができるんですね。土地を貸すというのは、農家さんにとってすごく抵抗があることなので。

ーお師匠さんとはどういう経緯で知り合いになりましたか。

南阿蘇がすごく好きだったので、「ここで就農したいな」と思い、役場だとかいろいろなところを回っていました。そうすると、皆さん口をそろえてお師匠さんの名前をあげたんですね。それで、お近づきになりたいなあと思って、いろんなイベントに出ました。そうしたら、その人と知り合いだよっていう人がいて、紹介してもらえたんです。

ーすごい行動力ですね。今でもお付き合いはありますか。

就農11年目の今でもお世話になってます。お師匠さんの後ろについてうろんころん(うろうろ)していた時に「〇〇さんのところの若い衆だ」と記憶してもらっていたので、就農して独立した後、地元に打ち解けるのも早かったのはお師匠さんのおかげです。

 

 

ー南阿蘇を選んだのにはなにか理由がありますか。

景色がよいことと、新規就農者に対してオープンな気質ですね。面倒見がいいんです。聞き込みをして、どの地区だったら面倒見がいいのかを調査してました。

ー聞き込みをご自分でされたんですか。

今は役場に行くと、農家を紹介してくれる新規就農者向けの制度が整っていますね。でも自分としては、そういう用意されたものよりも、実際に足で回ったほうがいいなと。受け入れてくれるだけの経営能力があるとか、そういうのをみていました。今も農業の勉強は本やインターネットよりも、直接人に聴くほうが多いですよ。

 

4時間かけていた水やりの時間がほぼゼロに

 

ートマト栽培をする上で、一番困っていたのはどんなことですか。

朝の水やりに時間がかかりすぎることですね。10種類以上のトマトを育てているので、細かい水管理が難しかったんです。水やりの多い日は、3、4時間かけていました。日によっても違うので、今日はどれぐらい水やりをしようか毎日考えていました。ITのシステムを導入して、簡素化・時短ができました。ITを使って必要なかん水施肥をしてくれ、細かく管理してくれますからね。朝の大事な時間を別のことに使えるようになったのはありがたいですね。

ーITシステムを導入する前の水やりは、具体的にどういう作業でしたか。

手動のバルブ(水栓)を開けたり閉めたり。ほかの仕事をしながら、時計のタイマーが鳴ったら開閉して、またタイマーが鳴ったら走って開閉して……の繰り返しでした。閉めるのが遅れたりすることもありましたし。

ー8時からスタートとして11時まで、ということでしょうか。

そうですね。そこまで大変な思いをして、水を1、2回しかあげられなかったのが、今回機械を導入して、1日10回できるようになりました。

 

 

ITシステムの制御盤。ハウス11棟 合計50aのハウスを、ゼロアグリ1台で管理している。

 

灌水施肥量はITシステムからの指示され、点滴チューブを通して人の手を介することなく自律的に実行。

 

ー水を多くあげると、どんなメリットがあるのでしょうか。

土の中の水分量がほぼ一定になるので、作物にとって嫌なストレスがないんですよね。収穫の量も安定しました。水やりの仕事はほとんどなくなったので、その時間でほかのことができるようになりました。

ーほかのこととは、例えばどんなことですか。

それは……うろんころんというか。次に大切な管理の仕事に時間を使えるようになりました。作業が止まらないように、「スタッフさんにこの後こういうことをしてもらおう」ということを考えるのに大きく時間を割くことができるようになりました。

ーグラフを毎日見るのは、大変ではないですか。

グラフを見るのは、メールチェックみたいな感じですね。1画面をチェックするだけで済みます。例えば、パッと見て、「トマトの茎が細い」と感じたら家に帰ってグラフをじっくり見て、過去のデータをさかのぼり、原因を考えたりします。

ー原因がわかったら、どのように対策を立てるのでしょうか?

例えば、葉の色が薄くなったと感じた時は、土壌のEC値をみながら、肥料の割合を多くしてあげます。そうすると、3、4日後に跳ね返ってくる。やっぱり肥料が薄かったんだなあと。あとは、品種によって肥料や水やりの量が全く違うんです。それを機械で管理することができるようになったことで、ずいぶん楽になりました。

 

複雑な肥料配合を自動で。ITシステムが規模拡大を導いてくれている

 

ー導入のきっかけは。

トマトを育てても目が肥えなかったんですよね。違いっていうのがよく分からなかったり、名人クラスが育てた作物の色の違いとかも教えてもらうんですけど、その場では分かっても、自分の圃場でやってみるのはむずかしいというか。植物と会話をするように……とよく言われましたが、会話ができなかったので(笑)

ーなかなか微妙な違いは分かりづらいですよね。

それで、自動灌水という、自動的に水を送るシステムを導入しようと思いました。2年ほど前にインターネットで検索したんですね。そうしたら、養液土耕システムのホームページに行きついた。

ホームページをじっくり見たら、自分のしてほしいこととその「ゼロアグリ」というシステムがぴったりだったので、連絡をとりました。そうしたらすぐに来てくれて……。半年ほど検討した後、2016年4月に導入しました。

 

 

ーシステムを入れて、収量はどうなりましたか。

システムを導入した昨年、地震の関係で収入が半分近く、収量はそれ以上に下がりました。定植準備の最中に地震が来たので、地震から1ヶ月半以上、注文していた液肥用タンクが来なかったり。苗も植えられなくて、1ヶ月ぐらいそのままの状態で置いておくしかなかった。弱り切った状態で植えました。ほとんどデータにならなかったです。

ー導入して初めての年に震災がおこった。。

そうです。でも、ゼロアグリの会社の方が、地震の後すぐに来てくれたんです。僕たちも、家に入れずに、車の中にいるようなときにわざわざ来てもらって……。定植に間に合うように機械を設置してくれました。嬉しかったですね。

ー大変でしたね……。そうすると、震災の影響でシステムを導入した結果は出ていないのでしょうか。

いいえ。昨年の秋にシステムを導入して栽培したイチゴは、すごくよかったですね。味も収量も満足いくものでした、来年はさらに増収を狙いたいです。目指すは、今年の1.3倍のイチゴの収量。楽しみです。

ーゼロアグリを導入して、お休みができても、どんどん忙しくなりますね。

そうですね。でも、肥料の配合や水やりは、仕事の中でも一番難しい部分なんですね。それが自動でできたことは本当に大きいです。

ー特に楽になった部分はどんな作業ですか。

従業員へ作業を指示するのに割く労力がかなり省けましたね。例えばスタッフさんに1つの区画を任せるときに、肥料の配合や水を、自分でもわからないのに教えなくてはいけなかった。それを数字で教えられるというのは、「規模を拡大してください」というようなものなのです。なぜITのシステムを設置しないないの?と逆に思ってしまいます(笑)

ー今はどんな販路で販売しているのでしょうか。

出荷の7割が契約販売です。すこしですが通信販売をしています。

ーありがとうございました。最後に、これからやってみたいことについて教えてください。

直売所をやりたいです。トマトをここで売ったり、ジューススタンドをやったり。見せ方を工夫して作っていきたいです。トマトとイチゴの自動販売機なんかもおもしろそうですね。

 

 

活用ツール紹介

次世代養液土耕システム「ゼロアグリ」 (http://www.zero-agri.jp/
これまで見えなかった地下部の温度や水分量をセンサーで測定し、作物の状態に合った水と肥料を自動で供給してくれます。データはクラウド上に保存され、いつでもタブレットから見ることができます。各種データは、クラウド上に保存されているので、いつでも閲覧可能。来年の栽培時にも参照することができます。
>ゼロアグリについて

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