「まず行動せんことには始まらない」IT農業で遠方への視察も可能に

黒を基調とした服装に合わせたパナマハットに、脱色した髪、耳に光るピアス。おしゃれないでたちの男性は、福岡のイチゴ農家、梅田悟さんです。ハウスの自動開閉機をはじめとした3つの農業IT機器を活用し、挑戦を繰り広げています。

実家のイチゴ農家を継ぎ、50a(アール)から始めたイチゴ栽培も現在は60aまで拡大、平成27年度産のJAふくおか嘉穂イチゴ部会では単収2位の成績を収め、地域で個人表彰を受けるほどの成長を遂げました。

そんな梅田さんのハウスには、親御さんの代から導入しているハウスの自動開閉装置から、二酸化炭素発生装置、自動灌水装置まで「いいものは取り入れたい」という貪欲さが随所に表れています。

様々な作業を自動化した分、日々の手入れや挑戦へ時間を使っていきたいと語る梅田さんの「挑戦」に迫りました。

 

失敗が技術力を伸ばす

 

意識して農家らしくない格好を選んでいるんです。

服装についてのこだわりを、梅田さんはこう語ります。服装だけではなく、農業の技術や設備も貪欲に新しいものを取り入れています。

もともとは歯科技工士の仕事に就いていた梅田さん。実家のイチゴ農家を手伝ったことをきっかけに農業のおもしろさに気づいたときの経験をこう語ります。

自分がやったことが目に見えるというところにおもしろさを感じました。もちろん、技術がないと空回りすることもあるし、努力が結果に直結するわけではありませんが。

 

 

そんなきっかけから就農した梅田さんですが、就農当初の収量は地域でも下の方だったといいます。そんなときに出会ったのが、お師匠さんのような存在の先輩農家でした。

それまではあまり話したこともなかった方でしたが、自分から話しかけてみたんです。彼の下に通っているうちに少しずついろんなことを教えてくれるようになりました。まずは話し相手になることから始めた結果、少しずつ変わってきたのかなと感じています。若い子は萎縮せず、先輩にどんどんわからないことを聞いていった方がいいと思いますね。

現在60aのハウスでイチゴを栽培している梅田さん。平成27年度産では、地域のイチゴ部会で単収2位の成績を収め、個人表彰を受けました。それだけの結果を出しているにもかかわらず、梅田さんから出てきたのは妥協のない姿勢でした。

2位になったことに満足はしていません。常にチャレンジしたいと思っているので、たとえ1位になっても多分満足しないと思います。むしろ失敗することが大切なんです。失敗してわかることの方が多いんですよ。もちろんできれば失敗したくはありませんが、そこを改善すればまだ伸びるので、早いうちに失敗を経験できる方がいいなと思います。

同じ失敗をしないように、記録は欠かせません。参考になりそうなところへ問い合わせたり、先輩にアドバイスを求めたり。師匠をはじめとした地域の人に助けられることも多いといいます。

自身が助けられてきたからこそ、新規就農をして新しく飛び込んできた若い人へのアドバイスも積極的に行なっています。

自分だけができていてもダメですね。あらゆる人にライバル意識を持って取り組む必要があると思います。

 

 

数値分析で環境のコントロールが可能に

 

梅田さんは、農業にITの力を積極的に取り入れています。

例えば、5年前に導入した二酸化炭素発生装置。日中の二酸化炭素を400ppmに保つことで作物の光合成を促進し、収量を伸ばしていくというものです。導入後は二酸化炭素発生剤を吊り下げる必要もなく、作業も楽になったといいます。

 

 

二酸化炭素の濃度を上げる時間帯を数値で指定することもできます。「濃度を上げたい時間帯に必ずハウスに行かなくてはいけない」ということもなくなりました。

同じ機材を地域で導入している農家も収量を伸ばしており、仲間内での評判もいいそう。

他にもタイマーをセットするだけで、設定した時間帯に合わせて自動で水やりや、液肥の供給をしてくれる自動潅水装置やハウスの自動開閉装置も取り入れています。親御さんの代から導入した自動開閉装置は雨になると自動的にハウスの屋根を閉めてくれるため、天候が変わったときにわざわざハウスに行って開け閉めする作業から解放されたと、梅田さんは語ります。

 

 

間違いなく楽になってますね。こういうのがなかったら常にハウスに張り付いていなきゃいけないんですよ。どこかに出かけることもできない。もし雨が降ったらすぐに戻って来ないといけないし。だから自動化できる部分に関しては自動化していった方がいいと思います。そのぶん手入れなどの仕事や新しいことへの挑戦に時間を使っていけた方がいいですね。

 

「まず行動せん(しない)ことには始まらない」挑戦し続ける梅田さん

 

その挑戦のひとつが他地域の視察です。イチゴの大生産地である福岡県の県南地方へ、地域の青年部で研修へ行こうという提案をしています。

地域の中でも多くの収量を挙げている先進農家の栽培を見てみたいです。やっぱり(僕らとは)何か違うことをしてると思うんですよ。その技術を学んで、取り入れていきたいですね。もちろん、やり方を教えてくれるかどうかはわからないですけど、まず行動せん(しない)ことには始まらないので。

 

 

梅田さんの挑戦は、この「学ぶことへの貪欲さ」に支えられています。例えば、県南地方で大きな収量を挙げている農家さんたちは、省力化するために苗のポット選びにも工夫があるのだといいます。その話を聞いた梅田さんはすぐにそのやり方に倣って実行してみたのだそう。そんな、数字やデータからは見えない部分を、実際に成功者の下を訪れて直接学びとろうと考えているのです。

上の人がさらに上を目指すのは難しいと思います。でも、今収量がそれほど多くない人たちが頑張っていけば、こちらの農家の底上げにもつながるのではないでしょうか。まだまだ収量は伸びると予想しています。

 そんな梅田さんの挑戦を支えているのが、JAふくおか嘉穂の大塚将人さんです。研修の手配をしたり、販売方法の改善点について普段からざっくばらんに話し合ったりと、JAとの二人三脚のもとで若手農家の活動は進んでいます。

 

JAふくおか嘉穂の大塚将人さんと

 

「他地域の視察をすることで、自分たちの地域の若手農家が希望を持つようになってほしい」そんな思いが梅田さんにはあります。将来的には、先進農家の圃場を見学するだけではなく、自分の圃場を先進農家に見ていただくことも考えているのだそう。

最後に、これから挑戦していきたいこととして、梅田さんは、地域の青年部で現在話し合っている、販売方法の改善についても語ってくれました。

売り方を変えていきたいです。今は資材の価格が上がっても売値は変わりません。値段を自分たちで決めたいですね。どんどん機材代が高くなってメリットが減っていくばかりなので、経費がかかった分上乗せするような仕組みを作りたいんです。地域ブランドなんかも「やってみたいね」と話し始めたところです。色々挑戦はしてみたいですね。

現状に満足することなく、地域の若手を巻き込んで技術の底上げを図る梅田さん。就農5年目にしてお父様を亡くされてから挑戦し続けてきたその姿には、お父様から受け継いだ「新しい物に挑戦する精神力と行動力」、ご自身で身につけられた「経営者としてのバランス感覚と人間力」がお話のなかで随所に感じられました。梅田さんの挑戦はまだまだ続いていきます。

 

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