データは若手が篤農家に追いつくための武器ーJAと農家、地域一体での農業IT導入

愛知県西尾市。自動車関連産業の発展とともに、農産物の生産拠点としても発展してきたまちです。そんな西尾市では、JA、メーカー、そして農家が一体となってIT農業の導入を進めています。

今回は、モニタリング装置と農作業記録ツールを導入しているイチゴ農家の梅田英則さんと、地域の農家へのIT導入を進めている西三河農業協同組合(JA西三河)営農部の大島健一さん、中村有佑さんにお話を伺いました。(アイキャッチ写真左から、中村さん、梅田さん、大島さん)

 

地域密着のIT農業。農家・JA・メーカーで開発に挑戦

 

ー県としてIT農業を促進されていると伺いました。地域の中で何人の方がIT農業を利用されているのでしょうか。

中村さん:県の補助事業を使って、環境モニタリング装置を9名の農家が導入しています。

 

 

ーモニタリング装置では、何を計測できるのですか?

大島さん:温度、湿度、二酸化炭素の3つを測っています。オプションで日射計やECセンサーを導入している農家もいますね。メーカーは名古屋のベンチャー企業で、3年ほど前から愛知県の産地に合わせて、開発も一緒にやらせていただいています。

ーツールの開発も、地域密着型なんですね。

大島さん:そうですね。メーカーの担当者が現場に何度も足を運んでくださって。防水機能についても、「湿度が高いハウスにも耐えられるぐらいのものにしてほしい」という要望を出したこともありました。

 

 

 

ーJAの方からこちらの製品をお勧めしているのでしょうか?

大島さん:そうですね。様々なモニタリング装置が出ていますが、地域の農家みんなで同じ機器を導入した方が、データも蓄積しやすいと考えています。

 

ITは新しい気づきの道具

 

ー梅田さんがモニタリング装置を導入されたのは、いつだったのでしょうか?

梅田さん:3年前ほど前です。自宅と圃場の間に距離があるのですが、圃場に行かないと温度やCO2が確認できないことに悩んでいました。そんなときに、JAさんからモニタリング装置のことを教えていただいたんです。スマートフォンで圃場の環境がリアルタイムで確認でき、データも蓄積可能という点が便利だと思い、導入しました。

 

 

ー実際導入してみていかがでしたか。

梅田さん:安心して外出したり、外で作業をしたりできるようになりました。警報機能があるので、外出時に異常が起きても気づくことができるのです。イチゴ農家の場合、パック詰めのために圃場の外に出るときが多い。なので、警報機能は本当に助かりますね。

それから、1日の温度の流れを正確に把握できるようになりました。例えば、気温によって暖房を入れたり、換気を増やしたりするタイミングを決められるようになりました。

大島さん:これまでの篤農家は、暖房を入れたり、換気を増やしたりするタイミングを、体感で行なっていました。気温で感じたり、植物の状態を見たりして判断していたんです。

 

 

モニタリング装置の導入で、経験の少ない若手農家でも数字を見て篤農家と同じことができるようになりました。上手い人の栽培の癖が数字で見えるといいますか。ITは新しい気づきの道具ですよね。

ー「新しい気づきの道具」。いい言葉ですね。篤農家の方たちもモニタリング装置を導入されているのでしょうか?

中村さん:篤農家の方には、地域の後輩たちの勉強のために入れていただいたという形ですね。

ーやっぱりJAさんと農家さんの信頼関係があるからなのでしょうね。

大島さん:昔から築き上げてきたものがあるのかもしれませんね。篤農家のやり方を真似るうえで、データを見てより具体的な話ができるようになったと感じています。部会がより良くなるように、篤農家の方も含めた皆さんが協力してくださっています。

 

20人が集まれば20通りの試行錯誤ができる

 

ー地域の中でのお話でいうと、データの共有の他に勉強会もされていると伺いました。

中村さん:IT農業を行なっている9名の農家での研究会を行なっています。そこで課題の整理や情報共有・調査もして、栽培技術の向上を図っております。具体的にいうと、施設内の環境及び生育調査結果についての議論ですね。IT農業を導入している圃場を回って、生育や管理の状況確認もしています。

梅田さん:どんなデータを取ればいちごの栽培技術の向上に役立つのか、そのためにどんな設備が必要なのかを議論している段階です。

 

 

大島さん:1人の場合、1年に1作しか試行錯誤ができませんよね。でも、20人が集まれば1年で20通りの方法を試すことができます。それをモニタリング装置でデータを蓄積していけば、かなり有効なものになると考えています。1人ではできないことですよね。

梅田さん:導入された生産者の方々と勉強会や意見交換をすることによって、父親が持っている技術とは別の技術を知ることができるようになりました。すごく大きな変化ですし、良かったと思っています。

ーこれからやりたいことを教えてください。

梅田さん: ITを活用して、収益や労働環境を変えていきたいです。技術がもっと進めば、収量の予測から人員の調整もできるようになっていくと思うんです。労働配分が自由になっていくと予想しています。そうしたら、ITを使って最適な働き方ができるようになるのかもしれません。

 

 

ーこれから導入を考えている方にアドバイスはありますか?

大島さん:やっぱり環境を見比べてほしいですね。自分と他の人の作業の違いを見ることが、栽培が変わるきっかけになると考えています。

梅田さん:導入して環境を見ることで、農業に取り組む意識も変わって、意欲が湧いてくるというのも大きいと思います。自分自信も、他の生産者のデータを見る時間が増えたことで、栽培について考える時間が増えました。意識は着実に変わっていると思います。

今はまだ情報やデータを集めている段階ですが、こうして新しい一歩を踏み出すということ自体に意味があるのではないかと考えています。

県とJAと農家が一体になったIT化であることを強く感じました。相互の信頼関係があるからこそ、新しいツールも地域の中で受け入れられたのではないでしょうか。今後、蓄積されたデータで、西尾市の農家の方たちがさらなる飛躍を遂げていく未来が見えるような気がしました。

 

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