田舎暮らしへの憧れからパッションフルーツ農家へ。ネット予約販売を活用した流通のメリットとは?

日本では主に沖縄や鹿児島で生産されるパッションフルーツ。プチプチとした食感が特徴的なこのフルーツを千葉県・館山市で育てているのは「RYO’S FARM」の梁寛樹さん。

インターネットを通じた予約販売や東京・青山のマルシェに出店し、農産物を消費者に直接届けることを大切にされています。

趣味はサーフィン、元大手メーカー勤務という梁さん。どのようなきっかけで農業に取り組まれているのでしょうか。

今回は、新規就農の経緯やパッションフルーツの販売における意識、今後取り組みたいことについてお話を伺いました。

 

「田舎暮らしへの憧れ」が就農のきっかけ

 

 

ーまずは、就農のきっかけを教えていただけますか。

私は東京生まれ東京育ちで、農業のバックグラウンドはありませんでした。大学卒業後、新卒で企業に就職し広報・PRの仕事をしていたのですが、徐々に都会の生活に疲れてきてしまったんですよね。趣味がサーフィンなので、海や田舎に行く機会が増え、毎日サーフィンができるような環境で暮らしたいなと。そういうライフスタイルへの憧れを抱くようになりました。

そんな時私は、転職先を探すために「地域おこし PR」と検索してみたんです。その際に引っかかったのがこの館山市の地域おこし協力隊の募集。これから農家の担い手となる若者を募集するしているということで応募し、地域おこし協力隊としての活動を始めました。

実は私は最初から、生産者になろうと思ってたわけではなかったんです。館山市の地域おこし協力隊の活動内容は「農業を活性化させるもの」であれば手法は問わないものでした。そのためはじめは、広報・PRの経験を生かして地域のPRや農産物のブランディングを行おうと動いていたんです。

ところが「農産物を使ってこんな加工品を作って、おしゃれに販売しましょうよ」とか「パッケージを変えて都会で売りましょう!」なんて提案しても誰もそんなこと求めていませんでした。

そもそも課題は「次世代の農家の担い手、後継者がいないこと」。農産物をPRしても、農家をやる人が増えなければ根本解決にはならないと気づきました。

そこで、地域おこし協力隊になって1年後くらいには「生産者になる」と決意したんです。

ー現状を知った上で、思い切った決断だったのですね。育てる農産物として、パッションフルーツを選んだのはなぜだったのでしょうか。

パッションフルーツは春にタネを植えたら、その年の夏には収穫ができ、生産効率がいいんです。加えてこのあたりは温暖な気候もあって、パッションフルーツを育てるには適した環境があります。イチジクや花などの生産を行う農家が周りに多いなか、新規就農者の私は極力他の生産者と被らないようなものを育てようと思って選びました。

ー現在、生産したパッションフルーツはどんなところで販売していますか?

育てたパッションフルーツは、東京・青山のマルシェに持っていって直接お客様と顔を合わせて販売したり、ホームページや「OWNERS」というプラットフォームを利用してインターネットを通じて販売しています。市場に下ろすのではなく「RYO’S FARM」という名前が出るような形でお客様に販売することをしているんです。

特に東京・青山のマルシェではパッションフルーツを購入したお客様と、次のマルシェで再会し「めちゃくちゃ美味しかったよ!」と言ってもらえることがありました。今は、生産から販売まで全て一人で行っているので、ここまで全ての工程を見渡せる仕事って他にはないなと思っています。

 

 

インターネットを通じた予約で確実に販売を行う

 

ーインターネットを通じた販売では、どんな販売をしていますか。

販売プラットフォームで行っているのは、お客様に「農産物のオーナーになってもらう」という販売方法です。利用しているOWNERSでは農産物をあらかじめ予約のような形で、オーナーとして購入していただき、収穫の時期に合わせて発送をするという仕組みになっています。

パッションフルーツは夏に一気に色づき始めます。収穫がはじまったら、販売までの時間は待ったなしなのでどうしても必死に「販売しなくては!」と焦りが出てくることもあります。そんな課題を解決できるのが予約販売なんです。OWNERSやふるさと納税の返礼品などは、収穫前から予め販売先・送り先を把握することができます。

収穫してから急いで販売先を探す必要はなく安定的な販売を実現できます。理想は、100収穫数があるとしたらそのうち50くらいは予約の形で販売できるようになることです。今後、強化していきたい販売方法ですね。

ーインターネットやマルシェを介して直接、消費者の方とやりとり・販売を行っていく中で、意識されていることはありますか。

販売する際の責任感が、芽生えているかなと思います。お客様からすると「千葉県産のパッションフルーツ」ではなく「RYO’S FARMのパッションフルーツ」と認識されるんですよね。お客様のためにも本当にいいものを届けなきゃいけないなと、意識しています。

例えば箱詰めをする際には、一つひとつを手で持って重さを確認します。農産物なので、どうしても中身がしっかり実ってないものもたまに発生します。パッションフルーツを持った時にずっしり感があるかどうか。グラム数で量るだけではなく手間をかけて確認することで、品質への責任を意識していますね。

品質の悪いものを送ってしまったら二度と買ってもらえないと思っているので、そのあたりは直接消費者に届けているからこその感覚かもしれません。

 

 

「全てを捨てて新規就農」ではなく、活かせる経験をもつこと

 

ーこれから新しく挑戦したいことはありますか。

加工品の新たな展開を考えたいなと思っています。現状は「リリコイバター」というものを手作りで作っていて、トーストやクラッカーなどに塗って食べると美味しいです。これは「DEAN&DELUCA」での取り扱いも決まりました。

これから考えられるのは、チョコレートやお酒など。バーやレストランにもパッションフルーツを卸しているのですが、パッションフルーツのカクテルやモヒートが人気とのことなんです。パッションフルーツは果肉部分が限られているため、いかに有効活用しながらフルーティーさを楽しんでもらえるかというところが肝になります。

ー新規就農を考えている方やIT導入を考えている方に向けて、アドバイスをお願いします。

私は農業未経験から新規就農者となりましが、全く新しいことをしている意識はそれほどないんです。インターネットを活用した販売など、従来の農業と比べれば新しい取り組みと映るかもしれませんが、企業で培ったマーケティングやビジネスの法則に従っているだけで、ビジネスでは当たり前のことをやっている感覚です。「サラリーマンを辞めて新規就農」というと、今まで持っていたものを全て捨てるような感覚がしてしまうかもしれませんが、そうではないことを伝えたいです。

ー自分の経験してきたビジネスや、仕事の中で培った能力を活かしていくような感覚なのでしょうか。

そうですね。私は企業で広報をやってきた経験や英語が話せるという強みを生かしています。

農業を始める際、今までの経験って無駄なのかとか、留学までさせてもらって農家になるって申し訳ないなとも思ったことがあります。しかし今思うといろいろな経験が農家になって今活きているんですよね。

例えば青山のマルシェのお客さんは、外国人も多く英語でコミュニケーションできるのは強みになります。パッションフルーツの収穫が始まった時期は、ニュースリリースを自ら書いてメディアに配信したり。これは広報経験のある私だからこそ考えつくもので、普通はまずやらないことです。

そういった経験がいろいろ重なって今があるなと思っています。農業を新しく始めるということは、今までの経験を全く捨てるということではなく、自分の経験を活かせる場でもあることを伝えたいです。

 

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