IT農業は「安心」を与えてくれる。モニタリングシステムが、人力で温度管理をしていたブドウ農家を救う

畑に出て、作業をしているのが何より楽しいんです――。山梨県山梨市でブドウを中心に栽培する茂手木農園の茂手木貴さんは、少し恥ずかしげな表情で語ります。

22歳のときに実家の農園を継いだ後、やりがいを感じていた中で直面したのは、大規模な雪害。家の近くにあるハウスが倒壊してしまい、車で約15分ほどの距離にあるハウスに移設しようとしていとき、頭に思い浮かんだのがモニタリングシステムの導入でした。

「最初は親とぶつかったけれど、導入後は喜んでくれた」という茂手木さんのIT農業は、どのように実践されてきたのでしょうか。

 

農業は努力しただけ、成果がみえてくる

 

―今日はありがとうございます。最初に、農業を始めた経緯について教えてください。

中学校のときから家の手伝いをしていて、昔から農業をやりたいと思っていました。畑で作業をするのが楽しいんですよ。自分で努力しただけ成果も出てくるので、やりがいも感じていました。そこで、22歳のときに実家の農園を継いだのが始まりになります。

―学生のころも、農業について勉強をされていた?

そうです。山梨園芸高校、東京農業大学の短期学部で農業について学びました。卒業後も、果樹試験場でブドウ栽培の勉強をさせていただきました。

―農業づくしですね! 就農されてからは、順調に進みましたか?

両親と意見や考え方が違ったのは、結構悩みましたね。たとえば新しいITシステムが登場したときに、説明をしてもうまく伝わらなかったり。経営に関する提案をしてみても、就農して数年だったのもあるせいか、聞く耳を持ってくれませんでした(笑)。

―そうだったんですね…。

転機となったのは、2014年に起こった大規模な雪害でした。家の近くにあったハウスが倒壊してしまったので、車で15分ほどの距離にあるハウスに移設しようか考えていて。

果樹は温度管理が非常に大切なので、距離が遠くなってしまうと大変だなと。どうしようかなと悩んでいたときに、山梨県のアグリビジネススクールで教えてもらったモニタリングシステムの存在を思い出しました。導入したところ、両親が非常に気に入ってくれたんです。

 

茂手木農園で導入しているモニタリングシステム

 

―モニタリングシステムを導入する前は、どのように温度管理をしていたのですか?

ワイヤレス温度計は導入したのですが、センサーの位置から100m以内にいないと計測結果が分からない仕様で…。農作業をしているときだけ、温度を確認できるような形でした。

そのため、自宅でご飯を食べているときに急な天候の変化があったりすると、わざわざ農園まで行って、換気窓の開け閉めをすることで温度の微調整を行っていたんです。

―ほとんど人力だったわけですね…。

はい。モニタリングシステムを導入したときに、換気窓の自動開閉システムも導入して。リアルタイムの温度データをもとに、遠隔からでも画像で自動開閉換気窓の作動の確認もできて日々の不安から解放されました。こうして日々の不安から解放されたので、両親が大喜びしてくれたのは印象的でしたね。

 

決め手は、導入コストの安さ

 

―モニタリングシステムは、具体的にどのような機能があるのですか?

温度や湿度、日射量、土壌水分、CO2濃度などを計測してくれています。2分ごとにデータがクラウドに送信されているため、機器が壊れたとしてもデータは消えないですし、パソコンやスマートフォンのアプリから計測結果をいつでも確認することができます。

―導入を決めた一番のポイントを教えてください。

導入コストの安さですね。私たちは規模がそこまで大きくないので、初期費用が8万9000円(3Gモデル)、クラウド利用料+通信費が月額2260円だったのが魅力でした。

―温度管理以外に、変化はありましたか?

付属のカメラで、農園の様子を写真で記録できることです。換気窓の開閉状態や侵入者がいないかといった状況を確認できたり、昨年の成長記録との比較も可能になりました。

他にも、勘で行っていた水分量の調整や枝の管理が、データをもとに判断できるようになりましたね。特に水分量は、どうしても暑い日には水を多くあげたほうが良いかなと思っていたのですが、データをみると植物にとって与えすぎな状態であることが分かったんです。

―収穫量や品質といった面でも効果は出たのでしょうか。

明らかに品質は上がったのを実感していて、これは単価や秀品率の向上として表れています。収穫量という意味では、今後モニタリングシステムで管理しているCO2濃度をもとに、炭酸ガス発生装置を導入することで、増やしていけると考えています。

 

収穫2か月前のシャインマスカット

 

「IT農業を活用して、規模を拡大していきたい」

 

―IT農業の導入は、多くの農家が「興味はあるけれど、よく分からない」といった理由で足踏みをしている気がします。そのような方に向けて、アドバイスをお願いできますか?

私は雪害で導入を決めましたが、データを取得してから見える景色が変わりました。果樹は生育期間が長いので、一つひとつの現象に対して要因がすぐに出ません。そのため、施策の効果が分かりにくい。しかし、データを記録しておくことで、過去の様子から何が効果を発揮していたのか分かるようになったので、迷っている方には導入をオススメします。

―ありがとうございます。最後に、茂手木さんが今後目指すことなどを教えてください。

モニタリングシステムと作業を自動化する機械を導入することで、距離が離れていてもある程度農業が可能なことが分かりました。少し遠い地域だったとしても、その地の利点を生かしながら、IT農業を活用して規模を拡大していけたらと思っています。

 


 

「モニタリングシステムを導入する前は、天候の変化が気になっていつも不安だった」と語る茂手木さん。IT農業の導入は、収穫量と品質といった目に見える効果だけでなく、農家の方々がこれまで感じていた心理的な負担も軽減できるのだと、今回の取材で学びました。

 

 

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