「データの本質を見抜く」環境モニタリングシステムで品質向上へ

「データの本質を見抜くことが重要」こう持論を展開するのは、栃木県高根沢町でイチゴを栽培する加藤康宏さん。2年前にハウスの環境モニタリングシステムを導入したことで、手間を省き、イチゴの品質も飛躍的に向上・継続しているそうです。

そんな加藤さんのデータの見方のコツは、「単に数字を見るだけではなく、温度や湿度の関係性や変化のパターンを掴むこと」だそう。自身の圃場の環境を考慮して総合的に数値を見ていくことが大切だといいます。

そんな加藤さんに、これからIT導入を考えている方へのアドバイスを伺ってきました。

 

モニタリングシステム導入で、自由に出掛けられるように

 

加藤さんは就農11年目。種苗会社やIT企業での会社員を経て、コメと野菜を作る兼業農家だった実家を継ぎ、新しくイチゴの生産にも挑戦し始めました。

イチゴは技術の差が収量にはっきり現れます。手間をかけると収量が上がる。そういうところが、自分に合っていると思いました。とはいえ、イチゴのノウハウは何もなくて。”情報を収集して効率的かつ客観的に技術を向上させないと先輩には追いつかない“と考えていましたね。それで、SNSを利用して情報収集と情報交換をしました。情報をもらうためには、まずは発信することが大切だと思います。

 

 

そんな加藤さんが初めて利用したIT農業は、9年前に導入したデータロガー。ハウス内に設置したセンサーで収集した気温や湿度、CO2のデータを、記録計に保存することができるというものでした。

しかし、記録計ではリアルタイムで気温を見ることができず、センサーのある場所に行って確認する必要がありました。さらに、途中でデータを取り出しづらかったため、数値を記録しても、そのデータを活用するまでには至らなかったといいます。

記録計を使いこなせていなかったんですよね。ただ、データ管理を通じて環境の変化をなんとなく掴んではいました。データの重要性というのは感じていたんです。

そんなときに、加藤さんが以前勤めていたIT企業が、ハウス環境のモニタリングシステムを開発・販売していることを知ります。そのツールを使えば温度や湿度、二酸化炭素などのデータについて過去の数値をグラフで見ることが可能になるだけではなく、スマートフォンやパソコンなどから遠隔で確認することもできるのです。

 

モニタリングシステムのセンサー

 

昔勤めていたという縁もあって、加藤さんはモニタリングシステムの導入を決定。2年前のことでした。

モニタリングシステムを利用して、手間が省けたといいます。作業場から離れた場所に位置する加藤さんの圃場。作業場にいると、ハウスに強風が吹いて施設内の気温が下がっても、全く把握できないことも多かったのです。圃場の様子が心配で足を運んでも、無駄足に終わることも少なくありませんでした。

今では、圃場が心配になっても、システムで異常がないか確認すれば済みます。手間がかなり省けましたね。自分が外出していても、スマートフォンで数値を確認して、妻に換気の開け閉めやスイッチのオンオフを指示することができるようにもなりました。これまでは圃場管理のため、会議や営業に行くこともできませんでしたが、自由に出掛けられるようになったのです。自分の時間を作ることができました。

 

二酸化炭素発生装置もセンサーで制御。CO2濃度が下がると、自動的に稼働する

 

さらに、温度や湿度、土壌水分などを数値で把握・改善ができるようになったことで、ロスが半分以下となり、商品の品質も安定したといいます。

 

 

近年、加藤いちご園では直売による売り上げが伸びています。直売所への出荷量を増やし品切れをなくすことで、「加藤いちご園のイチゴ」をより多くの人に知ってもらい、リピーターを増やしました。今年からはオリジナルパッケージも作成。取引先を増やし、より直売に力を入れました。

安定して同じ品質のものを提供することで、安心して購入していただき、リピーターが増え、売り上げと省力化につながると考えています。当園のイチゴはとてもおいしいと言われますが、本質的には「おいしくない要素」がないということだと思ってます。それ以上の品質やおいしさは、主観で好みの範囲だと思っていて、手間もコストもかかります。必要最低限のおいしさと品質を安定して作りたいです。しかし、それが何なのか? 難しいです。

 

「数値のパターン」を掴む

 

2年前、地域の中でも農業ITを利用しているのは加藤さんのみでした。しかし昨年、町内でもモニタリングシステム導入者が数人出てきました。特にソフトに興味を持っているのは新規就農者。今年地域で就農した2人も、加藤さんのアドバイスを受けてモニタリングシステムを導入したといいます。

地域の先駆けとして活動する加藤さんに、これからIT導入を考えている方へのアドバイスをいただきました。

 

 

他の人の温度や湿度をそっくりそのまま真似しても意味がありません。人それぞれ圃場の条件は異なりますよね。先輩の話を聞くときも、その人の施設の概要を理解して、自分の施設の条件の場合はどうか、とフィルターを掛けて考える必要があります。

大切なのは「本質」を見ることだと加藤さんは語ります。温度がどう動いたか、どういう管理をすればどのような変化が起きるのか、そのパターンを掴むことが重要なのです。

生き物であるイチゴにとって、一定の温度を維持することがかえってマイナスに働いたり、逆に多少環境に変化をつけることが、イチゴの防除に役立つこともあります。だからこそ、「瞬間的なデータは意味がない。データの動きを見ていくことが必要だ。そこに」本質がある」と加藤さんは語ります。

環境をどういうふうに管理するかが本質だと考えています。だから、ピーマンやトマトなど自分とは異なる作物を栽培している方たちの話を聞いていても、勉強になることが多いですね。施設園芸だけではなく、露地栽培の方たちとも情報交換をすることもあります。露地と施設の違いを理解できていれば、逆に発見があるんですよ。

柔軟に他の作物の話も取り入れ、議論と情報交換を続ける加藤さん。「データの本質を見抜く」という言葉には、日々イチゴの状態を観察し、イチゴや数値と向き合っているからこその説得力がありました。そんな加藤さんのアドバイスだからこそ、後輩たちの心に響くのでしょう。

 

 

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