新規就農34年目、IT農業で3割収量アップした地域のリーダーはドローンでのコメづくりにも挑戦する

茨城県のオリジナル品種「いばらキッス」。適度な硬さと爽やかな甘みを持つ、新品種のイチゴです。

先駆けとなっていばらキッスを栽培したのは茨城県小美玉市のイチゴ生産者グループ「拓実の会」代表の浜野博士さんです。15年前に炭酸ガス発生装置を購入するなど、以前からIT農業を取り入れていました。

4年前にいばらキッスと出会い、その味に惚れ込んだ浜野さん。「より品質の良いいばらキッスを世に出そう」と、導入したのがハウスのモニタリングサービスでした。

結果、経費削減と収量アップを実現。省けた時間で、ドローンでのコメづくり等のIT農業における新たな挑戦や、後進の育成に取り組んでいます。

地元の品種のために、パワフルに活動する浜野さんにお話を伺いました。

 

炭酸ガス発生装置でイチゴの品質向上

 

浜野さんが新規就農したのは34年前。会社勤めを経て、地元小美玉市にUターン就農しました。当時働いていたガソリンスタンドの配達先でご馳走になったイチゴのおいしさ。その味が忘れられず、農家への道を歩み始めたといいます。

近所のイチゴ農家へ弟子入りし、技術を学び、以来、イチゴとコメを作り続けています。

特に浜野さんがこだわっているのは肥料づくり。農薬を与えず、自身で竹炭や芽こんぶ、貝殻などを混ぜて作った天然肥料を使っています。

 

 

そんな浜野さんが初めて実践したIT農業は、就農20年目に採り入れた自動制御型の炭酸ガス発生装置でした。導入前は、夜間に手作業で火をつけていました。ガス切れや爆発事故の可能性のある、危険な作業を続けていたのです。規則正しくガスを発生できないことで、病気が出たり、味や品質が落ちたりしていたといいます。

規則正しさが大事、という意味ではイチゴを育てるのも、子どもたちを育てるのも同じなんですよね。

浜野さん自身にも、子育てに規則正しさが必要だと痛感した経験がありました。子どもたちに、早寝早起き、朝ごはんを家で食べる、という生活をさせたところ、2年で彼らの成績が茨城県の平均を上回ったのです。”自分に合わせるのではなく、相手のリズムに合わせることがイチゴ栽培でも子育てでも重要だ”と浜野さんは語ります。

規則正しく安全な栽培の必要性を感じていた浜野さん。そんな時に知ったのが、自動制御型の炭酸ガス発生装置の存在でした。

そこで、何種類かの炭酸ガス発生装置を比較しました。各機械のメリットとデメリットを見極めて、自分にはどの機械が合っているのか、徹底的に調べたのです。単に機械を導入するだけでは駄目だと思います。自分も設備導入に失敗したことがありますが、その経験があったからこそ、メーカー同士を比較して購入することができるようになりました。

そうして選んだのが、あるメーカーの炭酸ガス発生装置。タイマーで点火と消火を自動化できるというものです。定期的にガスを放出することで、ガス代の節約・コスト削減につながりました。さらに、不完全燃焼も少なくなり、品質が良くなったといいます。イチゴの色合いが綺麗になって、甘みが増したのです。

 

いばらキッスとの出会いが、データ分析につながった

 

そんな浜野さんが4年前に出会ったのが、茨城県オリジナル品種のイチゴ「いばらキッス」でした。その適度な硬さとすっきりとした甘さに惚れ込んだ浜野さんは、早速いばらキッスの栽培に取り組み始めました。

さっぱり感があっていくらでも食べられるんですよ。これは行ける! とピンときました。

 

 

しかし、以前と同じ方法で栽培をすると、奇形が多く出てしまいました。品質の良いいばらキッスを育てるために、どうしたら良いか。いばらキッスブランド研究会や地域のイチゴ生産者グループ「拓実の会」のメンバーと話し合いました。結果”生産を見える化しよう”という結論にたどり着いたのです。

そこで導入したのが、ハウスのモニタリングサービス。温度や湿度、照度、二酸化炭素を測定し、ハウスの環境を数値やグラフで把握できるというものです。スマートフォンやパソコンで遠隔からもハウス内の設定値を変更可能。複数のハウスや、自宅から離れているハウスを一括で管理することが可能となっています。

浜野さんもモニタリングサービスを導入した当初は、データの見方が分からず、とまどったそうです。しかし、県の担当者らと話し合い、少しずつ分析を進めてきた結果、2、3年目にはだんだんとグラフの読み方が分かってきました。

 

 

モニタリングサービスを利用してから、経費は半分になりました。炭酸ガスが一定の濃度になったら、ガスの発生を止める。電気代が最小に抑えられる温度でウォーターカーテンからハウスに散水をする。そうすることで無駄な炭酸ガスや電気を使わずに栽培でき、経費が抑えられたのです。効率良くハウスの環境整備を行うことで、収量も3割増しになりました。

今では、愛用のタブレット端末を身近に置き、1日に何度もグラフを見て分析をしています。従業員の方へも数値で具体的に指示出しができるようになったため、説明もしやすくなりました。

 

画像提供:茨城県販売流通課

 

ドローンでのコメづくり・後進の育成に挑戦

 

IT農業で省くことができた時間を使って、浜野さんは様々なことに挑戦しています。その1つが、ドローンでのコメづくり。ドローンを圃場に飛ばし、センサーで撮影、肥料が不足している部分を可視化することで、的確に追肥し収量の安定を目指すというものです。

 

画像提供:ドローンジャパン株式会社

 

これまで、浜野さんの圃場では肥料配分を目視で行っていました。手書きの地図で、従業員の方へ肥料配分を指示していましたが、その作業が全てドローンでできるようになるというのです。

今後、ドローンでの撮影画像から、微生物の状況や温度、生育状況を調べていきたいです。自分たちでも葉の色である程度稲の調子は分かるので、繊細なデータをドローンで分析していきたいと考えています。

 

画像提供:ドローンジャパン株式会社

 

そんな浜野さんは農業の担い手育成にも積極的に取り組んでいます。就農希望者を研修生として受け入れたり、地元小学校の収穫体験を実施したりと、農業の技術と魅力を伝え続けているのです。研修生にも、モニタリングサービスで具体的に数値で指示を出すことができ、指導がスムーズになったといいます。

34年前に新規就農して、現在は次の世代にその経験を伝えるまでになった浜野さん。これまでに、4人の新規就農者が彼のもとから旅立ちました。自身の「教える」スタンスについてこう語ります。

うちに来る人には本気で教えています。責任があるんですよ。成功させるから、本気で取り組んでほしいです。

地域のブランドづくりがきっかけで導入したIT農業。柔軟な発想で、次々とIT農業や新しい品種に挑戦していく浜野さんの姿は、後に続く新規就農者にとって、目標となる大きな背中として映っているのでしょう。

 

画像提供:茨城県販売流通課

 

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