「どんな味のパクチーを、誰に届けたいのか?」クラウドファンディングで、若手農家が見つけた答え

「誰に、どんな味を届けたいのか?」改めて考えたことはありますか。

どんな味を届けるか、真剣に追求している農家さんがいます。佐賀県・武雄市でパクチーづくりに取り組む江口 竜左(えぐち・りゅうすけ)さんです。

2013年からパクチーづくりに取り組んでいる江口さんは、「さらにパクチーを広めたい」と、2018年5月にインターネット上で資金を集める「クラウドファンディング」に挑戦。

「初めて個人のお客様と向き合い、どのような味と香りのパクチーを提供していくべきかが掴めた」といいます。

クラウドファンディングで辿りついた、「理想のパクチー」とは? 江口さんにインタビューしました。

 

キュウリ農家からパクチー農家へ。直接販売で生まれた関係性

 

ーおじいさまの代から続く、農家さんだったそうですね。

そうですね。ただ、実家はもともと兼業農家だったので、「必ず継がなければいけない」というプレッシャーはありませんでした。田んぼを遊び場にもしていて、子どものころから農業には楽しいイメージがありましたね。入学した農業の専門学校でも、仲間に恵まれて。「仲間たちに負けたくない」という思いから、農家になる決意を新たにしました。

卒業後の2010年、父が建ててくれたキュウリ用のハウスで栽培を始めました。父がハウスに投資をしてくれたのもありがたかったですね。

 

 

ーパクチーを栽培するようになったきっかけは?

就農して4年後の2013年に武雄市から「パクチーを栽培してみませんか」とお話をいただいたのがきっかけです。当時武雄市は、「パクチーを特産品として広めよう」という取り組みをしていました。個性的な香りと味なので、最初は正直「どういうニーズがあるんだろう?」と思っていましたね。

ーその気持ちはどのように変わっていったんですか。

「パクチーという特産品を日本全国に広めることで、自分のふるさとである武雄市を元気にしたい」という思いはあったものの、パクチー自体が好きだったわけではなかったんですよ。

ただ、取引先であるタイやベトナムの専門店のシェフとやりとりしたり、タイ料理やベトナム料理を食べたりしているうちに、だんだんと好きになっていきました。シェフの方と近い関係を持てる直接販売だからこそ生まれた気持ちだと思います。

ー農協にキュウリを卸していた時代から、直接販売へ。大きな変化だと思うのですが、苦労は?

まず、請求書や納品書の作成など、事務作業が大変でした。シェフのパクチーに対する希望も多種多様で。「大きいパクチーがほしい」というシェフもいれば、「小さいパクチーがほしい」というシェフもいるし。販売先の希望を直接聞いて、交渉をするというのはそれまでの農業人生にはなかった体験でしたね。

事務作業が増えて、圃場にいる時間が減ってしまう葛藤はありましたが、お客さんから直接自分のつくったものについて意見を聞けたの喜びは大きかったです。

 

ー生産面について。

2013年当時は、パクチーを作っている人はどこにもいなかったんですよ。情報もないので一から栽培方法を自分たちで見つけ出す必要がありました。特に真冬と真夏はなかなか育たなくて…。3年目でやっと生産が軌道に乗って、ほっとしました。

 

「香りが強い露地栽培のパクチーを届けたい」クラウドファンディングで生まれた思い

ー2018年5月に、エスニック野菜をさらに広げるため、クラウドファンディングを始めました。

個人向けに野菜の販売をしたかったからです。そのためにも、個人とつながりたいと思い、クラウドファンディングを始めました。

 

エスニック料理をさらに広めるため、「エスニックのイベントを開催したり、レシピを提案したい!」とクラウドファンディングを実施。「パクチー山盛りセット」などをリターンにし、80万円以上を集めた

 

ー個人向けに販売をしたい、というのはなぜですか?

江口農園がもっと色々な人に知ってもらうためには、個人の方に愛されるような農園になるべきではないかと思って。個人が江口農園のパクチーを好きになって、飲食店に食べに行ってもらったら飲食店も嬉しいし、自分たちも飲食店と個人をつなげられたら嬉しいし。飲食店、江口農園、個人の3点を結んだ相乗効果を生み出せたらよいと思ったんです。

そのためにも必要な、インターネット販売についての学びの場にできればと思って、クラウドファンディングを始めました。

加えて、もっと畑に来てほしいという考えがありました。畑に来てもらえれば、どういう環境のもとでおいしいパクチーが育っているのかわかってもらえる。実際、畑に来てくれたシェフはほとんど成約してくれます。関係性がずっと続く傾向もあるんですよ。

ー個人と直接やりとりをしてみて、いかがでしたか。

個人のお客さんから直接「おいしい」「ほかのパクチーとは違うね」という言葉をいただけるのは本当に嬉しかったです。改めて、野菜をつくる喜びを感じました。

料理の方法について質問をいただいて、「これまでパクチーの料理方法についてあまり知らなかったな」という気づきもありましたね。パクチー以外の野菜について教えていただいたこともありました。そうやって、直接いろんなことを教えてもらう。ダイレクトに個人の方たちとつながって、意見を聞けて勉強になりました。

 

 

ー不慣れな個人客への対応に、苦労はありませんでしたか?

難しかったです。飲食店への対応と、個人への対応は全く違いますね。味の好みがバラバラなので。

逆に言うと、自分たちが味に迷っていたら、お客さんも迷うと思うんですよね。「どんな味がいいですか?」と農家に聞かれても困りますよね。

農家が自信をもって、「こういう味を提供したい」と明確にしないと、相手に届けられないと実感しました。「こういう味を、こういうパクチー好きの人に届けたい」と決めれば、その人たち向けのレシピも開発できるし、その人たち向けのイベントもできますよね。

ー江口さんは、どういったパクチーを届けたいと?

「香りが強い露地栽培のパクチーを届けたい」と決めました。日本では、見かけや形で農作物の品質が判断されてしまいますですが、味や香りにも付加価値をつけたいと思っています。味や香りにこだわってつくったものは、きちんと評価されて、単価も取れる。単価が取れれば、組織的な農業もできます。

そうすれば、休みがないといわれてる農業でも、いつかは週休2日も実現できるかもしれませんよね。このサイクルを通して、「農業したいな」と思えるような若い人を増やしていきたいです。

ー「これからクラウドファンディングをやってみたい」という農家さんにアドバイスをお願いします。

明確に自分で何をやりたいか、ゴールを決めておくのが大事です。自分も苦労しましたが、「個人のお客さんに届けるために、インターネットでの販売をする」というゴールがあったからこそ乗り切ることができました。クラウドファンディングをすること自体が目的になると、支援者の人の意見に流されてしまいます。「何のためにクラウドファンディングをやるのか」しっかり考えてほしいです。

 

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