「ファンづくり」を目指す農家を応援したい。農業マーケティング支援に取り組むファーマーズ・ガイド中島慶人さん

できる.agriメンバーと九州ツアーでの一コマ

 

「マーケティング」という言葉を聞いたことがあると思います。一言でいうと、農家さんのつくるものの「ファン」や「顧客」を生み出すことです。そのために適切な販路を開拓したり、情報発信をしたりする取り組みを「マーケティング活動」と呼びます。一見、農業とは関係ないように見えるマーケティング。実は今、力を入れる農家さんが増えているんです。

農業におけるマーケティングとは何か? 直売所の情報プラットフォーム「チョクバイ!」を通して、農家さんのマーケティング活動を支援する、株式会社ファーマーズ・ガイドの中島慶人さんにお話を伺いました。

 

直売所で売れば、利益は増える。これからの農家に必要なマーケティング活動

 

ー改めて、マーケティングとは何か教えてください。

自身の農産物の「ファン」や「顧客」を生み出すための活動のすべてです。生産に集中するだけでなく、販路開拓と情報発信を行うことの必要性が増しています。「〇〇さんの野菜果物が食べたい!」と指名されて買ってもらえる状態をつくることが、一つのゴールですね。

 

 

ーそもそも、農家になぜマーケティングが必要なのでしょうか?

従来の流通経路に卸すだけだと、自分たちで価格を決定することができませんので、これでは経営の見通しが立てにくい。拡大や再生産を見据えて、適正な価格で販売していくためには、その価値を自分たちで伝えることが必要です。

ー価格を上げている農家さんの事例を教えてください。

たくさんありますが、そうですね、例えば、千葉県にあるおばたファームさんです。小幡さんの代から、それまでの市場出荷をやめ、自宅庭先に直売所を開設、そちらと近所のスーパー産直コーナーで季節の野菜を販売しています。そして、夏にはブルーベリーの観光農園も営み、地元だけでなく都内からも多くのお客さんが来ています。お客さんは入園料を払い、摘み取りを手伝い、お土産を購入し、1時間で数千円のお金を喜んで払っていきます。これらの活動によって、収入は市場出荷時と比べて4倍になりました。

また別の農家さんでは、リスティング広告(yahoo!やgoogleで検索したキーワードにあわせ、関連した広告を表示するもの)やSEOなどのインターネットを使った広告宣伝活動に取り組む方もいます。来場者に「instagramで、このブルーベリージェラートのことを投稿してくれたら、サービスします」なんてSNS施策をやっている方もいます。その方は「今日のブルーベリー狩りはどうでした?」というアンケートにも取り組んでいらっしゃいました。直売所でもそのように顧客の声を聞き、取り組むところは多いです。マーケティングというこれまで業界外だった知識や経験を農業に持ち込むことで、その収益を増やす取組みをしている方は増えています。

ーそれはすごいですね。農業界全体で見たとき、マーケティングに取り組む農家さんは増えているのでしょうか。

はい、マーケティング戦略を明確に持っている農業者は増えています。スーパーのインショップに販売する人や、道の駅などの直売所に販売する人、ネットで販売する人。いくつかの販売先を使い分け、自身で顧客リストを獲得し、継続して安定的な売上をつくる努力をされています。

直売所で売ると、生産者の手取りは2倍以上になるそうです。ものすごく単純に言えば、年収が400万だったら800万になるということですよね。

ー収入的にもメリットのある直売。その難しさは、どういうところにありますか?

これまでなかった手間や時間がかかるんですよね。8箇所もスーパーを回るとか、ドローン出荷が早く実現できるといいですよね(笑)。ほかにもバーコードを貼ったりパッケージングも自分でする必要があったりするので。あるいは、自宅庭先で販売される方にとっては、顧客対応も必要になるので、そういう大変さもあります。一方で顧客の声を聞けるというのは非常に大きなメリット、モチベーションになります。

 

直売所の販売活動を支援する「チョクバイ!」

 

ー直売に取り組む農家さんに対して、中島さんはどのように支援しているのですか。

 

直売所を検索できるサービス「チョクバイ! 」。直売所のクチコミも投稿・閲覧することができる

 

身近な農家さんの直売情報が検索できるサービス「チョクバイ!」を開発・提供しています。農家さんの情報を一般の生活者に届けるサポートをしています。どこに直売所があって、どんなものが売っているのか、お店に行く前に確認できるサービスです。農家さんは、身近な直売所を起点に販売が増加すれば、デメリットを抑制しながら、収益アップや、生活者の声が聞こえることで仕事のモチベーションに繋がる機会も増やすことができます。直売所が生産者・生活者の双方にとってより楽しくて、より嬉しい買い物体験ができる場所にしていきたいと考えています。

ー「チョクバイ!」の特長を教えてください。 

ユニークなポイントとしては3つあります。1つ目は、いわゆるネット通販ではなく、リアルな店舗を起点にしている点です。身近に暮らす、農業者と生活者をつなぐからこそ、深い愛着・ファンの獲得が期待できると思っています。ウェブで初めて出会うのではなく、地元の農家や、地元産の農作物だからこそ、より応援されやすい。地元から口コミ、応援コメントをためることで、農業経営をさらに発展させていくためのマーケティング資産・武器を獲得することができます。

2つ目の特長としては、クチコミを重視している点です。今の時代、自身のアピールよりも、第三者からの評価が重要です。自分で「おいしいよ」というよりも生活者に「おいしかったよ」といわれる方が3倍まわりに伝わります。

 

 

チョクバイ!では、生活者のクチコミ、それもネガティブなコメントではなく、農業者を応援するコメントを集めることができるので、プラスの影響を周りに広めることができます。

3つ目の特長としては、リーズナブルであることです。無料でスタートでき、有料も固定で低額です。これまで近隣1万世帯にチラシをまくのに10万円かけて得ていた広告効果を、5,000円で利用できるようにしていきます。農家さんの投資対効果に見合う広告手法、料金プランを僕らがつくってご提供していきたいと思っています。これまでそういった視点のものは世の中になかったと思います。

 

「スタッフとお客さんとの、コミュニケーションのきっかけに」チョクバイ!新機能・eスタンプカード

 

ー『チョクバイ!』を使っているユーザーは、どんな層が多いですか。

家族の健康や旬の美味しさを探して、直売所を熱心に回っている人が多いですね。1ヶ月に応援コメントを100件以上投稿される方もいるんですよ。

6月から、新機能として「スタンプ」機能を出したそうですね。

はい。直売所を訪れることでポイントが貯まって行く機能です。来店していただくごとに、チョクバイ!サイトのマイページに電子スタンプを押してもらうというもので、紙の台紙にスタンプを集めて回るスタンプラリーをウェブ版にしたようなものです。これを全国に広げていきたいと思います。直売所同士の連携もつくっていきたいですね。

 

チョクバイ! 新機能のスタンプ。ユーザーのスマートフォンを使って、直売所の来店情報を記録できる。

 

ユーザーはスタンプを置いたお店に来店してもらって、数回スタンプを押せば、くじを引けます、そうするとクーポンが当たって野菜などをお得意様としてオマケしてもらうことができます。

ー直売所側のメリットは、どのような部分でしょうか。

2つあります。1つ目は売上アップにつながることです。既存顧客の直売所への来店頻度を高めることを狙っているのと、ウェブの施策になるのでこれまで来なかった若い世代の新規顧客の獲得も目指していきます。

2つ目は顧客分析ができることです。スタンプを押した方の性別や年齢、家族構成をレポートとしてご提供していく予定です。また、スタンプを押してもらうことで、初めてきたお客さんなのか、何回か来ているのか、常連さんなのかを判別して、それぞれに最適なメッセージを出し分けていきたいなと思っています。例えば、初めて来店するお客さんだったら「ありがとうございます、また来て下さい」、5回目の来店のお客さんだったら、「あと1回来たらオマケもらえますよ」というメッセージに。何十回も来ているような常連さんには、今度うちの畑を見学しませんか?特別ご招待します。と伝えてみたり。ITで仕組み化・自動化してしまって、少しの労力で大きな成果をお返しできるようにしていきたいと考えています。

ースタンプという形式を選んだのは、どういう理由があるのでしょうか?

コミュニケーションのきっかけになるようなものにしたかったんです。自分のスマートフォンに、直売所の人がポンと押してくれる。「もう6回も来てくれてありがとうございます」というような会話も生まれやすい。人と人との交流が直売所らしくて、ソフトタッチ感もおもしろいと思って。物理的にスタンプを押すので、どんな世代でも、直感的な動作ができるというのもポイントですね。

ー最後に、今後の展望を教えてください。

農産物直売所での「楽しい」と「嬉しい」をもっと演出していきたいですね。良い直売所では、品種の解説を詳しくしてくれたり、オススメの食べ方を農家さんが教えてくれたりして、行くとすごく楽しいんですよ。こういう直売所には、何度も行きたくなるし、ファンもつく。こういう直売所が日本全国に増えてくれば、地産地消がさらに盛り上がり、農業のこれまでのシステムや思考も大きく変わってくると思うんです。

誰のためにつくっているのか、どんな風に喜んでもらえているのか。それが見えることで農業はもっと魅力的な産業になります。生活者の側からも「いただきます」「ごちそうさま」がきちんと聞こえる“当たり前の毎日”にもっと貢献していきたいですね。

その他の記事

お問い合わせ