ITがもたらす広範なメリットを実感―できる.agriセミナー第3回レポート

4月25日、できる.agri第3回目となる農業×ITセミナーを千葉県で開催しました!今回は「生産、管理と販売編」と題して、公開座談会とワークショップを開催。IT農業に取り組んでいる農家として、以下の4名にご参加いただきました。

 

■登壇農家様

農業生産法人ベジフルファーム代表取締役社長 田中健二さん
元暴走族の総長・元ボクサー・元DJという異色の経歴の持ち主ながら、18歳で農業関連の業務に従事。仲卸・物流・管理・営業を通した経験を保有。「生産した後の事を深く知る生産者」として農業生産法人ベジフルファームを設立。

 

農業生産法人ベジフルファーム取締役 長山衛さん
創業者の参謀・知恵袋としてベジフルファームの経営に参画。プロモーション全般、マーケティング、ブランディング、WEB制作、チョウザメ養殖など広範囲に担当。

 

小島農園 小島正之さん
千葉県旭市において、代々伝わる農家。「三方よし」を経営理念に掲げ、関わる人みんなが幸せであるように、日々安心安全・新鮮な野菜を消費者に届けている。ハウスの環境測定装置を導入し、データと今までの経験を合致させることで、それまでの3割増しの収量に成功。次世代に繋がる、農業経営を確立するために、様々な取り組みをしている。

 

GREEN GIFT 鈴木敏弘さん
千葉県横芝光町で「白砂ねぎ」を栽培しているGREEN GIFT。ITシステムを導入し、各作業に対する時間や栽培データを蓄積し、地道な作業改善を続けることで、取引量・売りあげ共に倍増。規模拡大や新規就農者支援で、横芝光町を盛り上げている。

 

 

(写真右から)長山さん、田中さん、鈴木さん、小島さん

 

できる.agri実行委員会からは、AI(人工知能)搭載の土壌環境制御システム「ゼロアグリ」を提供する株式会社ルートレック・ネットワークス(以下、ルートレック)、農業生産者向けITソリューション「アグリノート」の開発・運営を行うウォーターセル株式会社(以下、ウォーターセル)の2社が登壇しました。

本レポート記事では、農家さんと実行委員会参加企業によるトークセッションとワークショップの模様をお伝えします。

 

IT農業は環境整備だけじゃない。思わぬ収入源をもたらすメリットとは

 

第一部はIT農業実践者による公開座談会。IT農業実践者の4名の事例を参考に「自動化」や「見える化」を実践していくなかで、上手くいったことや苦労していることをざっくばらんにお聞きしました。

まず、実践者の4名はIT技術をどのように活用しているのでしょうか。実家がもともと農家だったGREEN GIFTの鈴木さんは、人事査定にITを用いているそうです。

 

 

GREEN GIFTではアグリノートを活用して、日々のデータを管理しています。そのなかで、一番重きを置いているのは人事評価です。社員が毎日データを記入していくのですが、データを入れる質的な記述の濃さや気づきが多い人を高く評価していくようにしています。最初はExcelでシートを作っていましたが、アグリノートの導入でよりスムーズに記入できるようになりました。(鈴木さん)

小島農園の小島さんは、若者にとって「当たり前」となっているツールを導入するだけで、劇的なコミュニケーションコストの削減ができたとか。

ITというほどでもないですが、GoogleドライブやLINEを使用することで、コミュニケーションのコストが大幅に下がりました。「その程度」と思うかもしれませんが、いままで1人1人に電話していたことにくらべると、大幅なコストダウンにつながりました。(田中さん)

また、生産管理に関してもITを用いて大きな成果を得ているようです。

 

 

きゅうりは夏野菜のため、天候によって収量が左右されるのが当たり前でした。しかし環境制御システムを導入したところ、安定的に収量が上がるようになったんです。はじめはITの導入に懐疑的だった同業者も、収量が上がっていくなかで評価してもらえるようになりました。(小島さん)

ベジフルファームでは、一見農家と関係なさそうな「広告収入」が、大きな収入源になっているそう。

私たちは製品のファン作りだけでなく、企業自体のファンを作る方法論としてウェブを活用しています。はじめは単なるブログでしたが、さまざまなメディアに取材いただく中でPVが増え、広告掲載の依頼が来るようになったんです。以降、広告収入は弊社の収入源の1つとなっています。(長山さん)

いままで農業と関係ないと思っていた領域でも収益が生まれる。IT農業の可能性を感じさせる座談会となりました。

 

IT導入の決め手は「低コスト」で「多機能」

 

第2部では「農業IT相談室」と題して、企業側の視点から、機微のない意見を交わしあいました。登壇したのはルートレックの前方さんとウォーターセルの藤原さん。メーカー側から見た、IT農業の可能性や導入のコツについて紹介しました。

ウォーターセルが提供するアグリノートは、作業の進捗から生育記録、農薬の使用までをスマートフォンで簡単に記入できる作業管理アプリ。航空写真を利用し、圃場を色分けして管理できるのが特徴的です。

私たちは、農業の先人たちがノウハウを書き込んだ“手書きのノート”を後世に伝え、次世代の農作業に役立てられるようなアウトプットを目指しています。そのために、ただ“記録する”だけでなく、次の計画に役立つデータになるよう工夫しています。2012年にリリース後、現在は1000近い農家さんに利用していただいています。(ウォーターセル 藤原さん)

実際にアグリノートを利用する鈴木さんに、アグリノート導入の決め手を聞きました。

決め手は費用です。他のツールと並行してどれが一番コストがかからないか試行した結果、アグリノートが一番低コストで多機能でした。(鈴木さん)

また、どんな農家がITに挑戦しやすいといえるのでしょうか。ルートレック・ネットワークスの前方さんからはこんな話が挙がりました。

収量を上げたい、効率化したいなどの明確なモチベーションがあればITは応えてくれますし、導入後の成果も大きいと思います。IT導入にそれまでのキャリアは関係ありません。これから新規就農者でも大きく伸びる農家は増えていくのではないでしょうか。(ルートレック 前方さん)

 

いまの仕事に「無駄」はあるか? ワークショップで振り返り

 

第三部のワークショップでは、農作業や事務作業など、現在の事業のバランスについて記入してもらいました。そこから、ITを活用する余地はどこにあるのか? を考えます。

 

 

その後、いずれ自分が達成したい「理想的な農業」のバランスとはなにか、そこに行き着くには何が足りないのかをディスカッション形式で模索しました。ワークショップの最後には、理想に向かってできることについて、アドバイスを送り合いながら考えました。

 

普段は目の前の作業に追われ、毎日の振り返りができていなかった農家さんも、他社と比較することで何が足りていないかを理解し、これからの改善のタネとなったようでした。IT農業の導入へ、前向きな青写真を描くことができた農家さんもいたようです。

今回のセミナーは地元のテレビ局にも取材を受け、盛り上がりを見せました。

 

 

できる.agriではITを活用した農業の新しい姿を届けるため、今後もオンライン、オフライン両方での情報発信に取り組んでいきます。

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