山森農園リブランディングプロジェクト。 中島慶人さんから学ぶ、ブランド力向上のための価値の伝え方。

神奈川県の三浦半島でで農業を営む元気もりもり山森農園代表・山森壯太さん(http://dekiru-agri.jp/yamamori-033/)の一言から始まった、農園のリブランディングプロジェクトの模様をお届けする短期連載。

 

各分野のスペシャリストへの相談を通して、山森さんの挑戦をサポートするこのプロジェクトでは、途中経過をリアルタイムにレポートすることで、同じような課題を抱える生産者のみなさまにとっても参考になることを目指しています。

 

第3回目の相談相手は株式会社ファーマーズ・ガイドの中島慶人さん。直売所の情報プラットフォーム「チョクバイ!」を通じた、農家さんのマーケティング支援のプロです。

 

今回の対談では、いったいどんな山森農園の課題解決が展開されるのでしょうかーー。

 

過去の記事:

連載第1回の記事、阿部梨園佐川さんへの相談のようすはこちら:http://dekiru-agri.jp/abe-nashien-025/

連載第2回の記事、MISOSOUP山岸さんへの相談のようすはこちら:

http://dekiru-agri.jp/carrot-rebrand-057/

 

なにが価値なのかを伝える

中島さん(以下、中島):今日はありがとうございます、よろしくお願いします!早速、単刀直入に伺いたいのですが、今1番大きい経営課題はなんですか?

 

山森さん(以下、山森):労働強度をいかに下げるかが今の喫緊の課題です。

ここ三浦は大根とキャベツの産地なのですが、それらは重量野菜で、労働の負荷が大きい。それだと、障害者雇用に取り組んでいるのに、そういった人たちがなかなか働けないのです。

重いものは持てなくても、ジュースのシールを貼ったりならできる。なので、にんじんジュースをしっかり売れるようにすることでみんなが稼げるようにしていきたいというのがあります。

 

中島:なるほど、様々な方に農業経営に携わってもらう中で、農作業における体力的な負荷は問題になりますね。にんじんジュースをしっかり売れるようにする、とは単価を上げるためにブランド力を上げたいということですか?

 

山森: そうですね。ただ、ブランド力を上げるといってもやり方が色々あるみたいで迷っている状況です。
手土産品的なものとして売るには価格にも敏感になります。自分のために買われる方もいるので、そうなると価格を下げたほうがいいのかなとか。

高く売るんだったらパッケージとか、高級感のあるシールに変えるとかですかね。そういうというところを決めきれずにいます。

ただ、にんじんジュースって世の中に結構あって、相場的には1000円前後が売れる価格帯なんです。高く売っている農家さんは生産している人参が有機栽培であったり、自然栽培というようなところを打ち出していて。

正直、うちはそこまで手をかけられていなくて、大勢の中の1品としての価格になってしまっています。

 

中島:確かに、にんじんジュースもだいぶコモディティ化してきましたよね。大勢の中で埋没させるのではなく、山森農園さんらしい違いを打ち出していきたいところです。まず初めに大切なのは、お客さんに何にお金を払ってもらっているかを伝えることかも知れません。

これにお金を払っているんだというのが消費者に伝わるとそれが価値になります。
山森農園さんの場合だと、山森農園の人参を99.65%使っているというのがひとつ価値になるかと思います。
ジュースの原材料である人参ができるまでの過程まで含めて伝え、山森農園の人参がどのようなプロセスを経てつくられているというのが伝わっていくと価値になるのだと思います。

 

山森: 価値はしっかり伝えていきたいですね。
他の野菜に比べて結構試行錯誤して、かけた時間とか試した品種はすごく多いので、山森と言えば人参だという感じにしたいなというのはあります。

 

中島:いいですね、大切なことだと思います。そして、ブランド力を高めるために、お客様の声を拾っていくことは有効です。刺さるキャッチコピーとかってお客さんの何気ない一言だったりするんですよ。

自分の頭で考えていくというのも大事ですけど、お客様がこんなこと言ってたなというのをメモっておくと、意外と効きます。

次の一手が見えるまでの要素分解

中島:それと、買い手側の行動をひとつひとつ分解して課題をみつけて検証していく。そういうこともにんじんジュースのブランディングには有効になってくるのではないでしょうか。

 

山森: それを我々農家が分析するということですか?

 

中島:いえ。農家さんが一人で完結させるのではなく、外部の力を活用することを考えてみるのはいかがでしょう。

例えばWEBサービスであれば、広告が何回見られたか、どれくらいクリックされたかという数字を取り、分析することができます。
そこから、そのパーセントを上げるためにはどうしたらいいかを考える。
写真が悪いのか、一言目にキャッチーな言葉を入れた方がいいのかとか。

これは一例ですが、そのように要素分解していくことを農家さんと一緒にしたり、レポートして提供していきたいと思っています。

 

山森: それはすごく助かります。1か月ぐらい前にサイトを自分で作ったんですけど、アクセス解析とかなるともうダメだとなってしまって…

 

中島: サイトを自分で作ったって、すごいですね(笑)

農家の方にお話を聞くと、農業の経営指標を、収量×単価で測っていることが多いと思うのですが、ブランドづくりやマーケティングを考えるときには、収量×単価にリピート率みたいな指標を加えると良いと思うんです。

リピートしてもらうためにはどうしたらいいんだろうみたいなところを考えると、具体的にやらなきゃいけないことが明確になってきますよね。

 

山森: 次になにをしたらいいか考えるところまで手が回っていませんでした。

 

中島:労働時間も長い農業ですから、どこを重点的にやればいいのかが分からないまま販売や六次化を推し進めるのは、黄信号だと思います。

 

応援が目に見えることが効く

山森: 自分でホームページ作って、問い合わせとかメール返す時間とかが嫌なんですよね。
労働強度を下げるために自分の栽培技術を上げたいというのがあって、今はそこに全部時間を投下したいんです。
畑に向かいたいという気持ちがすごく強くて。

 

中島:その悩み、よくわかります。大切にしたい顧客だからこそ、ぞんざいには扱えない、かといって一つ一つにまともに対応していたら手が回らなくなってしまう。お客さんを大切にしつつ、多くの時間を割かなくてもより良い関係づくりをうまくいかせる仕組みを考えたいですね。ちなみに顧客の声はいまの時代、本当に大切になってきました。

当社でも色々と検証をやっていますが、クチコミサイトについて多くのユーザーが最初のイメージ写真を見たらその後の細かい部分は一旦飛ばして、他の購入者のレビューをすごく見ているということがありました。

購入者の良いレビューを貯めていくのが農家さんのマーケティングにとって大事で、それを書くのはお客さん本人なのでそこまで負担もありません。

自分だけで頑張るのではなくて周りを巻き込んでやっていく。そして、お客さんを味方にし、長く付き合っていくということが大事です。

 

山森: 農家としても、お客様の声が直接きけるのはすごく大きいポイントだと日々感じています。

 

中島: チョクバイでは書いてもらったコメントを全て目視でチェックしていて、ポジティブな応援コメントだけをサイトに載せるというスタンスです。

ご意見ももちろん大事なので、それは農家さんに個別にフィードバックしています。

 

山森: フィードバックが返ってくることがより美味しいものを作ろうというモチベーションになるので、それをきちんと拾えるのはいいですね。

やっぱり美味しいとか、いいことをやっているねと言われるとやる気が上がります。

 

身近なところから巻き込んでいく

山森: ただ、直接やるとニーズとかも色々になりますよね。

実際、幼稚園で使いたいとか、団地のマルシェで使いたいとかそういうのに個別に対応していくともっと細いニーズがそれぞれにあったりして。
野菜そのまま箱詰めでいいところもあれば、一個一個袋に包んで欲しいとか。

そういうのに対応するということが待ち受けてるっていう怖さが直売にはあったんですよね。

 

中島:手間や工数が増えてしまうことはなるべく避けたいですよね。そこを、私たちは身近な直売所の支援、生産者にとってより良い活用を実現することで、販売量を増やして手間はなるべく増やさないというお手伝いをしています。

一番いいのは山森農園さんの名前を指名して買ってくれるお客さんができて、その人が周りからお客さんを呼んできてくれることで、そのキッカケづくりや関係性づくりを支援していきたいと考えています。

山森農園の野菜が食べたいって言ってくれている人を身内に巻き込めていると、それが外に広がっていく。

三浦の人たちが「山森農園だから買ってるよ」という評判をさらに周りに広げていく状態を目指していきたいですね。

 

山森: ぜひお願いします。

実際、たまに農園に来てくれる方もいて、毎年スイカ楽しみにしてるとか言ってくれたり。あまりコミュニケーションの量はないんですけど、リピーターの方がつながってくれるとすごくいいですね。

そういう人をちゃんと作っていけるようにしたほうがいいのはわかっているんですが、口下手なので「食べればわかってもらえるんだけどな」と言ってしまいたくなります。笑

 

中島:個人的には「食べればわかってもらえる」と農園の自己紹介に書いてもいいんじゃないかと思っています。その一言が書いてあれば、伝わる部分はあります。でもその一言さえ書いていなければ、もう何も伝わらない。
しかもそこに実際に食べた人のいい声が入ってくれば、いい農家さんだとはっきり伝わるでしょうね。

自分で伝えないといけない部分も当然ありますが、自分らしくないことや周りの真似事を無理して言ってみても、結局は見てるほうにもわかっちゃうと思うんです。

なので、無理をしない程度に自分らしく発信をはじめて、周りに助けてもらってもいいと思うんです。

 

山森: 身近な人を巻き込む、価値を伝えるためにできることからやるということですね。

早速実践していこうと思います!

 

 

今回の対談では、ブランドとしての価値を上げる、そのためにどうやって価値を伝えていけばいいかの極意を聞くことができました。自分だけで頑張るのではなく、周りの人を巻き込んで価値を伝播していく。

ブランディングというと、画期的な手法やノウハウがあるのではないかと思いがちですが、目の前の人としっかり向き合って改善していくことがなにより大切なのかも知れません。

 

 

山森農園のリブランディングプロジェクト、連続相談は今回が最終回でした。

が、次回、総括編としてこの相談を通して山森さんの取り組みがどう変わったかをお届けします!

 

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!次回もお楽しみに!

 

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