山森農園リブランディングプロジェクト。 山岸直輝さんが実践した、現状を疑うことで見えてくる手法。

神奈川県の三浦半島で農業を営む元気もりもり山森農園代表・山森壯太さん(http://dekiru-agri.jp/yamamori-033/)の一言から始まった、農園のリブランディングプロジェクトの模様をお届けする短期連載。

 

各分野のスペシャリストへの相談を通して、山森さんの挑戦をサポートするこのプロジェクトでは、途中経過をリアルタイムにレポートすることで、同じような課題を抱える生産者のみなさまにとっても参考になることを目指しています。

 

第2回目の相談相手は株式会社MISOSOUP 農業プロデューサー山岸直輝さん。山岸さんは農園の魅力を発見し人々に届ける農家のブランディング/マーケティングの右腕として全国の農家を訪れている、六次化の専門家です。

 

今回の対談では、いったいどんな山森農園の課題解決が展開されるのでしょうかーー。

 

第一回目の記事:

連載第1回の記事、阿部梨園佐川さんへの相談のようすはこちら:http://dekiru-agri.jp/carrot-rebrand-055/

 

にんじんジュースのターゲットを考えると

 

山岸さん(以下、山岸):前回からどんな進捗がありましたか?

 

山森さん(以下、山森):前回の打ち合わせ後、一個一個、自分たちのやっていることから広げていこうとスタッフ達と話しました。障害者の方が働いていることや、三浦市という場所もブランドの要素の一つになるのではないかな、と。まずはどんな要素があるかを社長の僕が書いていこうと考えています。

 

もともと話のきっかけになった商品のパッケージに関しては、贈答用のにんじんジュースに絞って考えていくのがいいかなと思っています。。ネットで自社販売ができるように賞味期限がより長くなるようにしたり、手頃な小さいサイズのものを作ったり。また自宅用に手軽な紙パックのタイプもあるといいかな、とか。瓶だと日常的に買うには重い気もするので。

 

山岸:前者はいいですね!後者については、いきなりパッケージの出来上がりから考えるのは危険です。ターゲットが違えば、最適な商品のパッケージも異なってきますから。例えば一般消費者に毎日飲んでもらうなら紙パックが最適でも、贈答用だと違ったパッケージが最適になります。

 

いまの考え方は、誰のためかではなく現状できることから出発してしまっている印象です。これでは商品が誰向けにもなっていないし、本質的とは言えません。

 

これまでどんな形で商品開発を手がけてきたか

 

山森:たしかにそうかもしれません・・・。ちなみに同じように既にある商品をターゲットから考え直していった事例はありますか?

 

山岸:去年北海道で漁協さんと取り組んだ事例を紹介しようと思います。

 

漁協さんは次世代に向けて現在売れているホタテの他に、牡蠣の商品を作っていきたいと考えていました。しかし、牡蠣は世界中にあるうえ広島などの強力なブランドが既に存在するため、他の製品と差別化をしなければいけなかったんですね。そこで目を付けたのが「一年牡蠣」でした。漁協さんへの訪問を重ねていく中で、多くの漁師さんが小粒の牡蠣を美味い、美味いと食べていることに気付いたんですよ。

 

「牡蠣といえば大きいものが良い」というのがそれまでの常識だったのですが、「小さい牡蠣は売れないのか?」と牡蠣の常識を疑いました。すると、小振りの牡蠣はクラッカーの上に載せたり、殻無しの小粒の牡蠣なら欲しいという声があったりと、パーティー用のお持たせとして需要があることが分かりました。

 

漁師さんが好むという事実と消費者のニーズを掛け合わせて、「漁師が本当は愛する小さな牡蠣」ということをメインに伝えました。情報をそぎ落としてまずは一個のことを伝え、知りたい人は掘れば情報が出てくるようにしたんです。

 

このように、自分の魅力を考えていく上で大事なのは「一度疑う」ことです。にんじんジュースで言えば、たとえば「本当に赤い方がいいのか」「茶色くてもいいのでは」ということが考えられますね。

 

山森:自分たちの気づかなかったことに目を向けて、買ってくれる人目線で考えた方が良いということですね。最初からたくさん売ろうとするのではなく。お金や時間が足りないなかでやっていくには一個一個考えていくのがいいのかも。

 

山岸:一度試してうまくいかなくても戻ってきていいと思うんですよ。少しずつ変えていくとか。

 

山森さんなら何を疑う?

山岸:そもそも山森さんはなぜにんじんジュースづくりを始めたのですか。

 

山森:私の父が11年ほど前に始めたのがっきっかけです。それを6年前に私が引き継ぎました。当時は万単位で在庫を持っており、今はもう作っていない「黄色いにんじんジュース」なんかも販売していました。購入してくださるのは主にがん経験者の方や肌に悩みを持つ方ですね。一度芸能人の森本レオさんが購入されたり、テレビで紹介されたりしたのがきっかけでその時から購入し続けてくださっているお客さんもいます。

 

山岸:リピーターの方が一定数いらっしゃるのですね。なぜ今にんじんジュースのリブランディングをしようとお考えなのでしょうか。

 

山森:一緒に働いている障がい者の方がもっと活き活きと働けるように、賃金を上げたいと思っているのが大きいです。賃金を上げるためには収益を増やさなければいけませんが、にんじん単体では一定の利益しか見込めません。そこでにんじんジュースを地元で売れるもの、お土産として買ってもらえるものにし、売り上げを増やしていきたいと考えたんです。

 

山岸:地元で一番買ってもらいたい相手はいますか。これを飲んで誰に健康になってもらいたいか。隣のおばあちゃんか、近くの海に来るサーファーか、観光客か。誰に買ってもらえたらワクワクするでしょうか。

 

山森:その中だと観光客の人に買ってもらえると嬉しいですね。家に帰って飲んでもらえると、三浦と接点が生まれますし。地元に何かしらの形で貢献することが出来たらなと思います。観光客と一口に言っても、ターゲットは広いですけど・・・

 

山岸:観光客の方に買ってもらうために今取り組んでいることはありますか。

 

山森:ふるさと納税や三浦のブランド品認定を取得することはしています

。視察の受け入れなども。でも実際のところあまり効果は出ていないですね笑。

 

山岸:観光客のいそうなところでのアプローチはまだ?

 

山森:これから行っていこうと思っています。海の家とか、近所の農家さんとか扱ってほしいという声もあるので。

 

山岸:誰にも発信しない方が危ないですよ。

 

山森:本当にそう思います。どこで売りたいとか、だれに売りたいとかを発信していかないと周りは分かりませんからね。発信するのは本当に大切なことだと思います。

 

どう売るか

山森:実はうちのにんじんジュース、三浦の直売所では一番売れているんですよ。

 

山岸:すごい。山森さんの生産品だけを取り扱う棚などは作ってもらえなのでしょうか。

 

山森:作ってもらえないんですよ。生産者はみんな同じ扱いになります。直売所のパートの方が熱心だとPOPなどを作ってくださることはありますが。

 

山岸:それでは方向性を変えて海にもっとからめた商品にしてみてもいいのかもしれませんね。サーファーが海でにんじんジュース飲むのがかっこいい、みたいな。

 

山森:プロサーファーの人に飲みたいと言っていただいたり、、京急のサーフィンイベントに出店誘われたりしたことがあるんですよ・・・出店すればよかったな。

 

山岸:そういうイベントには出店していきましょう!あとは生姜入りとかみかん入りとか、にんじんジュースに色々加えて試しに売ってみるのもいいんじゃないでしょうか。これだけ海が近くて色々できるのは山森さんの財産ですよ。

 

山森:そうですね。ちなみに三浦の農家は値段を気にする方が多いんです。農地も広くないので販売を農協に頼ってしまいます。

 

山岸:山森さんの理念に書かれている「効率的な」は農家ではあまり言う人がいないことですよね。

 

山森:農業って効率が悪いと思うんですね。畑が分散しているのは働くうえで移動などの都合が悪いです。また売り上げのほとんどを繁忙期の収入に頼っているところも効率が悪いと思います。年間を通して働き、計画的に動けばもっとロスはなくせますし効率的な農業ができると思っています。

 

周りが関わる問題

 

山森:瓶のサイズの変更やジュースの混ぜ物の追加は今お願いしている工場でできるかが問題です。

 

山岸:加工場不足は僕らも当たる問題ですね。

 

山森:他だと群馬とか平塚とかが工場になります。

 

山岸:工場を動かすには、周りを巻き込んで相手のメリットを作ったり相手の課題解決の落とし所を作ってあげたりするのが効果的です。製造課題や原因を聞いてみると以外と単純だったりするので、そこを解決してあげるとか。なおかつ期間限定にする、ダメだった時の撤退もあらかじめ話しておくのが大切です。

 

山森:あとは対象を観光客に絞ろうと思います。彼らが何を求めているかをもっと深ぼり、それに合わせて何を変えていけるかを考えようかと。

 

山岸:いいですね。考える際は逆算していく方が良いと思います。壁に当たったらまた考えるというふうに。具体的に、観光客のどの層に売っていこうと考えていますか。

 

山森:サーファーの人たちは一回接点があったので、最初はそういった方たちに売っていこうと思います。発信していかないと、誰が何を求めているかもわからないですね。時間を掛けてジュースのサイズや色も修正していかないと。

 

山岸:生が一番美味しいから、家で作って出していくのがいいかもしれませんね。「生でお届けできない方向けに瓶でご用意しました。」という流れで販売していくのはアリかなと。

 

山森:来月マルシェでやってみようかな。そこでお客様からフィードバックをもらって、難しそうだったらやり直す。

 

山岸:自分ではなかなか決断できないことを外の人に聞いていくのはいいですね。案をできるだけたくさん出して、検証してみましょう。以前に豚肉のタイトルを作ったときは、100~200個ほど考えました。

 

山森:やっぱり案はたくさん出していくものなんですね。こういうきっかけがないとできなかったと思います。早速やっていきます!

 

今回の対談では、実際にどんな取り組みをしていくかまでも話し合うことができました。ターゲットを決め、常識を疑い、現在の取り組みに本当に効果があるか立ち止まって振り返り行動に移していく。

 

対談の最後には山森さんが新しい取り組みをしていこうかなと話していましたね。経営において意思決定をする場面はたくさんありますし、考慮することも多いもの。しかしそこで思考停止してしまうのではなく、ひとまずやってみて周りの方からフィードバックをもらうのは有効です。

 

山森農園のリブランディングプロジェクト、連続相談は次回が最終回となります。次回のテーマは「どう売るか」。次回もぜひお楽しみに!。

その他の記事

お問い合わせ