山森農園リブランディングプロジェクト。 佐川友彦さんから学ぶ、最初から完璧を目指さない挑戦とは。

神奈川県三浦半島。恵まれた気候で100年以上前から野菜の生産が行われていた歴史ある土地。

 

今回からの短期連載では、その地で農業を営む元気もりもり山森農園代表の山森壯太さんの一言から始まったプロジェクトの模様をお届けします。

 

そのプロジェクトで取り組むのは、にんじんジュースのリブランディング。できる.agriコミュニティのメンバーで、山森さんが現在作っているジュースの課題を解決しよう、というこの取り組み。

 

各分野のスペシャリストへの相談を通して、山森さんの挑戦をサポートしていくだけでなく、その途中経過を記事にすることで、他の生産者の方々にも参考にしてもらおうという企画です。

 

第一回目の相談相手は「畑に入らない農家の右腕」佐川友彦さんです。佐川さんは栃木県の阿部梨園でITツールを駆使した業務改善を実施、そのノウハウをオンライン知恵袋で公開するといった活動に取り組んでいます。

 

山森さんの課題に対して、いったいどんなアドバイスが飛び出すのでしょうかーー。

 

山森さん記事:http://dekiru-agri.jp/yamamori-033/

佐川さん記事:http://dekiru-agri.jp/abe-nashien-025/

 

■構成

・山森さん紹介、この企画のあらまし

・阿部梨園の「正直」なブランドづくり

・「みんなでやる」からブランドが本物になる

・ブランドってなんだろう

・次に向けて

 

 

阿部梨園の「正直」なブランドづくり

山森さん(以下、山森):うちではこんなジュースを作っていて。東京の百貨店さんに卸したりだとか、有名シェフのレストランで使ってもらったりだとかしているんですが、もっと直接お客さんに買っていただけるようにしたいなと思っているんです。阿部梨園さんは9割以上が直販なんですよね?ブランディングという点では何から始めたんですか?

 

佐川さん(以下、佐川):阿部梨園ではお客様へのメッセージの整理をするために、リーフレットやウェブサイトの見直しから始めました。具体的にはパッケージの情報が多すぎたため、効能やレシピといった情報をなくしたんです。梨は生で食べてもらうのが1番なので、「生で食べておいしい」というシンプルなメッセージに絞りました。

 

山森:発信する内容はどのようにして選んだのですか?

 

佐川:消去法です。阿部さんがどうこだわって、梨をどう食べているのかを参考に優先順位の低いことをそぎ落としていきました。商品をどうお客様に選んでもらうかを考えた結果、外から評価されて自然にブランドが築き上げられていったんです。奇をてらった、ミーハーなブランド化はせずにすんだのは、お客様の視点を大事にしたからこそですね。

 

山森:ありのままを伝えて、それが世の中に認められるという流れはいいですね。お客様に対して正直であるためには、小さいことをおろそかにしてはいけない。顧客対応がよりいっそう大切になってきますよね。うちはまだその仕組みが出来ていないからつくっていかないといけないな・・・。

 

佐川:もちろん、いい商品ができれば流れるように売れていく、ということはないですね。顧客対応をするにはそれなりの負担と覚悟、ノウハウが必要になります。もちろん対応していくうちに農家に対応できるレベルがどれくらいかがお客様にも伝わっていくことで、百貨店のようなハイレベルなものは求められなくなります。お客様も理解してくださるので。

 

「みんなでやる」からブランドが本物になる

佐川:アイディア出しや言語化はオーナーだけではなく、みんなでやるのが良いです。困っていることを挙げようとしてもすぐ思いつきませんが、みんなで向き合うことで気づけるようになります。「あの網が破れているけど見ないふりしてた….」など、そういうところからです。

 

山森:農家は声の大きい人が一刀両断し、年配の人が決定して終わりということがよくあります。だから関わる人が多くなるというのは、農園の雰囲気が良くなっている証拠だと思いますね。自分のところもみんなで取り組めるようにしたいです。

 

佐川:山森さんがこの場に社員さんを同席させている(※この取材には現場社員の佐藤さんも参加)のはとても良いことですよ。オーナーが社内外で異なる発言をしているのは良くないですからね。こんなふうに社員さんに立ち上げの段階から関わってもらい、オープン化して考えが伝わるのは良いです。社員みんなが頑張ったジュースと、社長が突っ走ってできたジュースとでは魅力が違います。

ブランディングに関してですが、大企業で行う場合は予算規模である程度売上の見込みが立ちます。しかし農家の場合は規模が小さい地上戦なので、また違うものになります。

 

ところで、山森さんはブランディングとはどういうことだと思いますか。

 

山森:ブランド、ですか。そうですね・・・。

 

ブランドって何だろう

山森:製品の品質ではなく見せ方でしょうか。使っているもの自体は大したことがなくても値段が高い製品があるのは、ブランド力に価値を認める人がいるからと考えられます。しかし製品を顧客の変化に対応させるべきか、ずっと変わらないものを提供し続けるべきか分かりません。

 

佐川:ブランドには新規顧客獲得かリピーター獲得か、というように異なった目的があります。阿部梨園は最初、その年に作ったものを買ってもらうことに必死でした。しかし新規のお客様が増えたころ、見かけの魅力で買ってもらうより、メッセージを見て買ってくださるリピーターのお客様が大切だと気が付きました。もともと常連さん目線の梨園ということもあり、毎年でなくても長年梨を買ってくださる方を見つけようと方針が決まりました。

 

山森:阿部梨園さんは直売で梨を販売されていますよね。ジュースなどの加工品は品質が安定しているけど、直売は品質でお客様を裏切ってしまわないか怖くて…。

 

佐川:それが、実は視点が逆なんです。直売をやっているおかげで、販売期間3か月のために1年間気を抜かずに、おいしい梨作るにはどうするのか考えられるようになりました。販売は接客スタッフだけの責任でないことが多いのでチームで考えられるようになりますし、直売していることがスタッフのやりがいになりましたね。

 

どういう農園なのか、キャッチフレーズを共有してみんながどういう農園か共通認識を持っておくといいですよ。

 

山森:「チームワークある農業を」ですね。楽しくやりたい。

 

佐川:それを幹に考えていきましょう。それに加えてお客様にどういうところで使ってもらいたいか、お客様に応じたブランディングをしていきます。

 

次に向けて

山森:最初はどうしたらいいかわからなくて宙ぶらりんになっていたんですが、現在進行形で結果を残している方から分かりやすい言葉でお話を伺えて、どうしていきたいか分かってきました。取り組み内容が難しいことではないので、挑戦して失敗してもすぐ修正すればいいと思えました。

 

佐川:阿部梨園も毎年リーフレットを変えられたら良いと思います。100点でなくても、気づいたことをどんどんやって世に送り出せばいいんです。そんなに怖くありません。

 

経営改善の必要性を感じても、何から手を付ければいいか分からない。ブランディングを実施するにしても、取り組みがイメージできない。でも実際にはシンプルな取り組みを簡単なことから始めることが、のちに大きな結果となってついてくる。今回の佐川さんとの対談は農家の方が挑戦にあたって感じがちなハードルを下げることが出来たのではないでしょうか。

 

山森農園での対談は今後、第二弾・第三弾と続きます。 次回の対談もぜひご覧いただけたら幸いです。

 

その他の記事

お問い合わせ