武器は「会社員時代の出会い」と「父の先見の明」。父が導入した環境制御装置・クラウドサービスをフル活用

できる.agriでも、多くの異業種から新規就農した方を取材してきました。今回登場するのは、2013年にハウスの設計メーカーを退職し5代続く家業を継ぐ形で新規就農した、トマト農家の荒井光夫さん。

20年以上勤務の会社員時代には、農業用ハウスの営業担当として、多くの農家さんとの出会いがありました。その中で、IT活用をする最先端の農業の現場も目にしてきた荒井さんにとって、環境制御装置やクラウドサービスを活用することは自然なことでした。父が導入した環境制御装置を、さらに拡張して活用。「ゆくゆくは収穫ロボットも導入してみたい」と目を輝かせます。

会社員時代の出会いと、父の先見の明を生かし、IT導入を進める荒井さんのハウスを訪ねました。

 

ファーストキャリアは農業用ハウスメーカーの営業担当。多くの農業の現場を見た経験が、今に生きている

 

ー5代続く農家さんだと伺いました。昔からトマト栽培をされていたのですか。

いいえ。もともとこの家は、露地野菜と田んぼをやっている農家でした。父が50年前にハウスを建てて、トマト栽培に転向したんです。「これからのハウス栽培なら年間を通してトマトを収穫して、東京の消費者に向けて出荷できる」ということだったのではないでしょうか。

ー荒井さんご自身は、もともと農業を継ぐことを決めていたのでしょうか?

昔から、両親の姿を見て「農家を継ぐ」と決めてました。ただ、父と一緒に経営するつもりはあんまりなかったかな。「父が引退するときが私が就農するとき」と決めていましたね。2013年に私が就農したときに、父も引退しました。バトンタッチみたいな形ですよね。

 

 

ー農業を志すことを決めていたにも関わらず、ファーストキャリアは異業種を経験したんですよね。

そうですね。他人の釜の飯を食べる経験も必要だと考えて、最初は会社員をやっていました。ただ、全く畑違いの会社員というわけではありません。農業用ハウスの設計・製造メーカーで働いていました。営業担当だったのですが、小さい部署だったので、購買も設計も全部やっていました。物件取ってきたら設計して。材料が必要だったら購入して、職人が必要だったら手配して…忙しかったですね。

ーそのときの経験は今に生きていますか?

農業関係の資材メーカーや機械メーカー、色々な会社の人と知り合いになって、大変勉強になりましたね。お客様の9割が農家さんなので、農家さんとのやりとりも多かったです。色々な農家さんの現場も見て回れましたし。

ー多くの農家さんとの出会いがあったかと思いますが、印象に残っている人はいますか。

特に花きの農家さんは、環境制御されている方が多かったですね。除湿機や冷房など、全自動で制御されている胡蝶蘭農家の方もいました。真冬でも日よけのネットを掛ける必要がありますし、気を遣うことが多そうでした。

 

環境制御装置を導入した「父の先見の明」

 

ーIT活用をしていた農家さんとの出会いもあったからこそ、今も機械を抵抗なく受け入れられているのでしょうか。

そうですね。ハウス内の自動制御などのIT化には、特に力を入れています。今は、ハウスの環境制御装置とクラウドサービスを活用しています。

環境制御装置とクラウドサービスを併用している、荒井さんのハウス

 

ー導入のきっかけはなんですか?

10年前にハウスを建てるときに、父が環境制御装置もつけてくれたんですよ。ハウスの温度や湿度によって、天窓の開閉を制御してくれるものです。その6か月後に、クラウドサービスも導入しまして、最初は温度の計測のみに使っていました。

ー環境制御装置を導入しているのに、クラウドサービスも併用しているのはどうしてですか。

ハウスの温度異常や停電、暖房機などのトラブルを教えてくれる「アラーム機能」を活用したかったんです。ハウスの暖房機の不着火や停電が起きたときに、スマートフォンに通知がいくように設定できるんですよ。うちのハウス全体で暖房機が20台もあるんですよ。それだけあると不具合がある暖房機に気が付かず、数時間もたつこともあるんですよ。暖房機の異常をスマホにメールで知らせてくれる機能を持っているものは、現在使用しているクラウドサービスにしかついていないものだったのです。

ーアラーム機能があると安心ですよね。

そうですね。安心して外出できるようになりました。自分だけではなく、妻のところにもアラームがいくので、二重にチェックができています。

ー当初は、クラウドサービスで温度のみを計測されていたということですが、現在は温度以外の要素も計測されているのでしょうか。

温度・湿度・二酸化炭素・日射の4つの要素を計測しています。きめ細かな環境制御をしようと、追加でセンサーを入れたのは2017年です。環境制御装置のセンサー値とも比較できるので、安心ですね。

 

 

父が導入したIT機器を機能拡張。営業計画でも頼りになるという嬉しい誤算

 

ー環境制御は、具体的にどのようにしているのでしょうか。

例えば、温度の場合は、1日を6段階に分けて管理しています。朝の9時は17度、昼間の11時は23度…というふうに、徐々に温度が上がっていくように管理しています。

ー特に、夏の温度管理は大変そうですね。

そうですね。もし日よけのカーテンがなかったら、すぐに40度を超えてしまうと思います。暑すぎると、トマトも日焼けしてしまう。そんな失敗を防ぐために、カーテンも自動で制御しています。うちで使っているのは、保温カーテンと遮光カーテンの2つ。保温カーテンは、温度が低くなったら閉めるように設定していますし、遮光カーテンは日射が強くなったら閉めるように制御しています。

ー加減が難しいですよね。データの見方のコツはありますか。

トマトにとって最適な環境を頭に入れて、それに近づけるためにセンサーのデータを活用しています。「トマトの理想的な環境に対して、温度が足りていないな」「二酸化炭素が足りていないから、二酸化炭素発生装置を作動させよう」というような考え方で制御しています。IT機器があっても、人間の知識と経験は重要ですね。

 

 

ー特に活用している機能はありますか。

積算温度の表示機能ですね。花つけした日を積算温度開始日に設定して、目標積算温度を入力すると、収穫予測日が自動的に出るようになっているんです。「今の気温だったらいつ頃収穫できそうだ」という予測を立ててくれる。日数が経てば、修正もしてくれます。これで、正確な営業計画が立てられるようになりました。頼りにしている機能です。

 

積算温度から自動で収穫予測日を出してくれる。荒井さんが頼りにしている機能だ

 

ー導入前は、どのように営業計画を考えていたのでしょうか?

導入前は、営業計画なんて立てていませんでした。トマトを見ながら「赤くなってきたな、あと1週間ぐらいかな」と目で収穫予測をしていたんです。取引先にも「あと1週間ぐらいだと思います」などと、ラフに言ったりしていました。

ーお父様が導入されたクラウドサービスや環境制御装置を、さらに拡張して活用する。色々新しいことを試そうという姿勢が素晴らしいですね。

ますます、人手が少なくなってきますから。上手く文明の利器を使って省力化しないと生き残っていけない、という危機感はありますね。収穫ロボットがあったら、ぜひ導入してみたいです。使えるものは、全部活用していきたいと思っています。

 

その他の記事

お問い合わせ