大好きな町を盛り上げるために。絵本作りから自動収穫まで、ITを導入したわけ

“趣味は何ですかと聞かれたら「地域おこしです。」と答えるようにしています(笑)。”

こう語るのは佐賀県太良町でアスパラの独自のブランド「森のアスパラ」を栽培する安東 浩太郎さん。「森のアスパラ」はその名の通り森でつくられています。栽培に使用する水は、「水源の森百選」のひとつ、多良岳系の水。そんな水をたっぷり浴びたみずみずしいアスパラは全国の主婦から愛されています。

「農業はあくまで手段。大好きなこの町を盛り上げるためです。」

インタビュー中、特に印象に残ったのはこの言葉。

地元の方からとにかく愛され、町を盛り上げるために次々と新しい取り組みをされています。


直感で町を好きになり、移住

 

 

ー安東さんは就農前、関西に住んでいたとお聞きしました。なぜ太良町に住もうと思ったのでしょうか?

太良町へ移住したきっかけは、結婚の挨拶で妻の実家があるこの町に来たこと。太良町の豊かさに衝撃を受けたんです。海もあり、山もある。みかん・牡蠣・蟹…何を食べても美味しい。直感的に好きになったんです。思い切って奥さんに移住を打ち明けたところ、二つ返事でOKをもらえました。

ーいきなりの移住…。すんなりと就農できたのでしょうか?

いえ、いきなり移住するとしても太良には企業がほとんどなく、農業しか仕事がありませんでした。そのため、移住して最初の2年間は吉野ヶ里に住み、農業法人で修行したんです。当初は5年間務める予定でしたが、子どもを授かったこともあり、太良での就農を前倒ししました。

1年間契約社員として働き、地域の農家さんのお手伝いを通して信頼関係を構築。その甲斐あってか1年後には畑をタダで貸してくれる方と出会いました。3年経ってようやく、自分の畑を持つことができたのです。ちなみにその方収穫などのお手伝いにもきてくれるんですよ。本当にいい土地と人に巡り会えました。

ー作物としてアスパラを選ばれたのはなぜでしょうか?

太良町はみかんの産地として有名で、農家の70%がみかんを主な作物として栽培しています。そのため、当初はみかん栽培を考えていたんです。しかし、当時みかんは20キロ収穫しても400円ほどにしかならないこともあり、多くのみかん農家さんから「やめておいたほうがいい」と言われました。

こどもが生まれるタイミングでもあったため、ちゃんと儲かる作物を選ばなくてはいけない…。他の作物を模索したところ、当時佐賀県が面積当たり収穫量日本一のアスパラに目をつけました。調べてみると、アスパラは利益率が高く、キロ単位の価格が1000円を超えることもある。魅力的な野菜だと思い、アスパラ栽培の開始を決断しました。

 

こどもと野菜を身近にする。ITツール活用

 

ー安東さんは農家さんとしてはめずらしくクラウドファンディング(※)を活用されています。アスパラと絵本がセットで届く「たべるえほん」プロジェクト。最終的に集まった金額は予定の10倍もの金額でした。

※クラウドファンディングとは、「こんなモノやサービスを作りたい」「世の中の問題を、 こんなふうに解決したい」といったアイデアやプロジェクトを持つ起案者が、専用のインターネットサイトを通じて、世の中に呼びかけ共感した人から広く資金を集める方法です。

 

 

農家として活動を続けるなかで実感していたのが、子どもの“食わず嫌い問題”。興味のある食べ物しか食べず、野菜に興味を持たない子どもが増えていることを感じていました。どうにか、子どもたちが野菜を好きになる仕掛けを作りたい。野菜への導線として「絵本」を作ろうと思ったんです。

そんなとき、クラウドファンディング研究の第一人者の方からお誘いいただき、プロジェクトの開始を決断しました。アスパラが竹やぶに似ていることから、題材は「竹取物語」。そこに僕たちが作る「アスパラ」を組み合わせたオリジナルストーリーを創作したんです。最終的にたくさんの方から賛同が集まり、予定の10倍の金額で達成。自分たちの想いをたくさんの人から共感してもらうことができました。

知り合いのこどもは寝る前に「読んで」と毎日せがんでくるそうです(笑)。そういう反響をもらえる瞬間も幸せを感じますね。

ー絵本の制作期間は6ヶ月だとお聞きしました。アスパラの収穫、発送と並行しての絵本作り、相当大変だったのではないでしょうか?

もちろん大変です。クラウドファンディングも、返礼品の選定、絵本のストーリー、イラスト、紙の材質…。やるべきことは本当に多岐に渡りました。でも、野菜や絵本を届けることで笑顔が生まれたり、直に反応があるのが嬉しいんですよね。また、多くのメディアに出ることで太良がピックアップされ、盛り上がる。これからも太良町のためにできることをやっていきたいですね。

 

アスパラ農家を救うため、収穫ロボットを試験導入

 

 

ーまた安東さんのハウスではアスパラの自動収穫ロボットも試験導入されていますよね。

はい。まだ試験段階ですが。この機械が浸透することでアスパラ農家さんの多くが暑さや時間的拘束から解放されるんです。アスパラは地域によって収穫する際の長さに制限があります。そのため適した長さのものか判別し、収穫しなければいけません。でもアスパラは夏場になると1日10cmも伸びるんです。

ー1日10cm!そんなに伸びるんですね

はい。そのため夏場は休みもとれず、毎日ひたすら収穫しています。また日中、ハウスの中は暑くてとても入れません。そのため朝、夕の比較的涼しい時間に収穫をするんですが、これでは拘束時間も増えなかなか遠出もできません。そんな悩みを抱えていた時、モニターのお誘いを受けました。まだ目立った結果は出ていませんが、なんでもやってみないとわからないですからね。

ITツール導入時に大切な「自分のブレない軸」

 

 

ー今後取り組みたいことを教えてください。

これからやっていきたいのは移住促進。オリジナルブランド「森のアスパラ」を若手に暖簾分けし、太良町を盛り上げていきたいと思っています。実は、移住促進のためにということで、誰もが一時滞在できる家を奥さんに内緒で買ってしまっていて(笑)。

ーそれはすごいですね(笑)。

いますでにモデルケースとして、熊本から移住してきてくれている方が1名います。彼にアシスタントとして作業してもらっているため絵本が作れたり、他の作業をすることができています。今はアスパラサブレやアスパラのお酢も製作中です。来年には彼も自分の畑を持ち独立してしまうのですが、暖簾分けを活発にすることで味に自信のあるアスパラの生産量を増やしていきたいと思っています。

ー今後ITを導入したい思っている方へのアドバイスをお願いします。

なんでもやってみないと分からないと思うんです。

僕はアスパラ農家をはじめたときに9棟のハウスを建て、すべてのハウスで育て方を変化させたんです。肥料の種類や水の量、温度変化など…。短期間で試行錯誤し、合わなければやめる。現在、光量を調整するクラウドも入れていますが、それも1棟だけです。合わなければやめるつもりです。

また、ITツールを導入する際に自分のブレない軸を持っておくといいと思うんです。僕の場合は「味に妥協しない」こと。いくら効率が上がっても、味が落ちるツールの導入はしません。逆に味が保てるなら、どんどんいろんなことに挑戦していきたいと思っています。

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