世界中に大きな影響を与え続けている、新型コロナウイルスの感染拡大。
「出荷先の飲食店が取り扱いできなくなった」といった被害の声から、「これを機にオンライン販売に力を入れることにした」という対応策まで。多くの農業者からも様々な声が挙がっています。
今回のパンデミックによる農業者への影響について、具体的な変化と全体的な潮流をつかむべく、4Hクラブ(農業青年クラブ)が会員を対象に行ったアンケートをもとに、できる.agriでは本件に関する分析記事を作成しました。
農業者の現状を知り、これからを考える一助になれば幸いです。
調査概要
調査対象:全国農業青年クラブ連絡協議会 メンバー(非加盟県クラブ員含む)
調査期間:2020年4月10日~30日
調査方法:グーグルフォーム(各県事務局よりメールにて周知)
回答数: 560人
実施背景:新型コロナでの自粛により農業界での影響が見え始めた中で全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)に参加する農業者への影響をまとめることで、農業界における新型コロナの影響や今後の方針についての一助となることを目指すため。
調査結果サマリー
①影響を受けた農業者のうち、緊急事態宣言発令直後から出荷数減となったのは60%以上
②営農における今後の不安要素は「取引先の減少」および「新型コロナウイルス感染症の感染」、「風評被害」
③農家が国に求める援助要望は「補償・助成金」、「感染症対策」
調査結果解説
- ①現在受けている影響は「取引先の減少」、「外国人実習生の入国規制による人手不足」、「観光需要減」。
緊急事態宣言が発令された直後にも関わらず、半数の農業者が影響を受けたと回答。(図1a)

影響があったと答えた農家の301件のうち、取引先の休校やイベント自粛、直売所や小売店舗との契約が減少したと答えたのは60%以上におよび、人手や資材の不足と答えたのも20%ほどとなりました。(図1b)

また営農品目別での統計をみると、酪農・畜産、果樹、路地野菜を取り扱う農家において、需要の一定数を占める観光業(直売所・イベント)などのへの影響が第2位となっており、昨今の各県観光事業の一旦を農業が担っていたこともわかります。(図2~8)







- ②今後起こりえる影響・不安は、「取引先の減少」および「新型コロナウイルス感染症の感染」。
今後の想定としては、取引先の需要見通しが立たないことを不安視する声がもっとも多く挙がりました。同時に感染リスクについてもかなり声が挙がっており、それによるマスクなど感染予防資材の不足への不安も言及されていました。(図9)

- ③行政に求めたい要望は「補償・助成金」、「感染症対策」
取引先の減少や緊急事態宣言の発令等で市場が動かない中、キャッシュ不足による資金難や離農への心配の声はすでに上がっており、行政に求めたい要望として「補償・助成金」が46%にのぼりました(図10)

4Hクラブ新型コロナ調査委員長 山浦氏コメント

コロナの影響は回復傾向も、天候問題など複合的には楽観視できない。
4月の調査実施後、現在も新型コロナウイルス感染者は増加中ですが、緊急事態宣言解除後より少しづつ経済が回っており、外出自粛の傾向がみられる中でも宅配事業、食材など家庭内での食へ楽しみを求める動きも活発化しているので農業者に対する影響の面では回復傾向にあるとみてよいかと思います。
ただし、長い梅雨の降水量・曇天による日照不足の影響で各品目の現場で大きな被害を受けており、供給減少による野菜の高騰など油断ならない状況にあります。高ければ農家が儲かるかというと、それまでのコロナによる需要減で例えば6月中旬のレタスは値段がつかず出荷調整(廃棄)されるほどで出荷しても最低価格だった後での高騰なので、レタス農家は畑で生き残った数少ないレタスを出荷しながらも今までのマイナスを取り戻しきれない状況にあります。
コロナ含む天候などの複合的な要因が現在をつくっているので一概にはコロナの影響のみで語るのは難しい状況です。
新規就農、オンライン化、六次化・・・ピンチをチャンスに変える農家も
また、業界的にインターネットリテラシーの低い傾向があったのですが、地域や団体の会合が中止となり、必然的になオンラインの流れが始まったことでインターネットの活用頻度が上がってきていることは良い傾向です。
まとめ:必要なのは仕組みと価値観のアップデート
今回の調査結果を受け、緊急事態宣言解除後の社会情勢やアフターコロナ、ウィズコロナと言われる中で農・畜産物の需要の変化を注視する必要があると考えています。 また、新型コロナによる各国の輸出規制などを見ると、国内自給率の問題も無視できません。
行政に期待することとして、国内農業者の減少や海外人材に頼る国内農業の生産形態の見直しといった仕組みのアップデートが必要なのはもちろんのことですが、農業を産業(仕事)として、また食料自給率を国力として捉えていく価値観の啓発が喫緊の課題だと思います。