「農業IT技術が増えるかどうかは、あなた次第」3社が登壇した”先進技術アワード農業2.0”

将来の日本の農業を支える20~30代前半の若い農業者が中心となって組織されている4Hクラブ(農業青年クラブ)。農業経営をしていくうえでの身近な課題の解決方法を検討したり、よりよい技術を検討したりするプロジェクト活動を中心に、消費者や他クラブとの交流、地域ボランティア活動を行っています。
現在、日本全国に約850クラブ、約1万3千人のクラブ員が、それぞれの活動を通じて、若手農業者の刺激となりつつ、“日本や世界で貢献できる農業者”となることを目指しています。

活動のなかで出会ったたくさんの農業IT企業の技術をクラブ員に共有しようと企画されたのが「先進技術アワード農業2.0」です。フェイスブックでいいねを集めた企業がプレゼンテーション。13社がエントリーし、勝ち抜いた3社がプレゼンテーション。3社には5000近くのいいねが集まったといいます。

できる.agriも2月27日に東京都内で行われた「先進技術アワード農業2.0」のプレゼンテーションをレポート。3社の取り組みと、会場の熱気をお届けします。

 

これからの農家の生き残り策は、知恵や情報を共有しあうこと

最初に登壇したのは、FARMSIDE works代表の佐川友彦さん。
以前できる.agriでもご紹介した阿部梨園の経営改善の話も踏まえ、会場参加者の多くを占める小規模農家にポテンシャルがあると語りました。

大手化学メーカーの研究職を退職し、阿部梨園に加わった佐川さん。2014年から2017年までに500件の経営改善を行い、2018年には阿部梨園の直売率は100%に。さらに、「経営改善で学んだ知識を公開しよう」とクラウドファンディングで資金を集め、2017年から「阿部梨園の知恵袋」というウェブサイトを公開しています。

「業界を問わず、生き残っていくために知恵を出し合わなければいけない時代です。自社の経営を改善するだけではなく、そこで出た知恵をグループ内や地区、全国大会で共有してほしいです」と佐川さん。

また、佐川さんは農業分野の先端技術の可能性にも触れました。IT農業が増えるかどうかは、会場の参加者一人一人にかかっているというのです。

企業がサービスを作るだけではなく、消費者が使って、それに対して対価を払う。このサイクルが回ることによってサービスの機能が改善され、便利になっていくのです。逆に、私たちがサービスを使わないと、キャッシュが回らず、企業が撤退することも。

 

photo by aiko hamada

 

「これからの農業を担うにあたって、どちらの未来を望みますか? アワードに登壇する企業の取り組みを見て、経営に取り入れる形で答えてほしい」と佐川さんは会場に問いかけ、アワード登壇企業の発表につなげました。

 

農業日誌アプリ「Agrion」で、日々の作業の改善を

アワードで登壇した1社目は、農業日誌アプリ「Agrion」を提供するTrexEdge代表取締役の池田博樹さん。大手電機メーカーやベンチャー企業で通信の専門家としてのキャリアを歩んだ後、2016年にTrexEdgeを設立。「ITで既存のビジネスを変えていく」というテーマのもとで、農業分野にも参入しました。

 

photo by aiko hamada

 

TrexEdgeで提供しているのは、農業日誌アプリ「Agrion」。作業内容・進捗・使用した肥料・種苗・農薬、機材など、メンバーが「どこでどう働いたか」をスマートフォンで記入・確認できるものです。スマートフォンの記録をレポートに出力すれば、日単位の作業時間、圃場単位の作業時間、人単位の作業時間も一目瞭然。メンバーがどのような働き方をしているか見える化し、改善ポイントの研究ができます。

 

スマートフォンで農作業の記録・管理ができる「Agrion」

 

「4Hクラブから農業のITを変えていきたい」と池田さん。バックオフィス効率化のための連携や、スマートビレッジでの活用を見据えた計画も予定しているとのことです。

 

農家と消費者を直接つなぐオンラインマルシェ「食べチョク」

2番目に登壇したのは、オーガニック農作物に特化したマーケットプレイス「食べチョク」を提供する、ビビッドガーデンの代表取締役 秋元里奈さん。神奈川県相模原市の農家に生まれた秋元さんにとって、畑は身近な遊び場でした。しかし、両親から「農業は継ぐな」と言われて育った秋元さんは、新卒ではゲーム会社に就職。実家の農家は、廃業して耕作放棄地となりました。

 

photo by aiko hamada

 

ITの世界で働いていた秋元さんですが、「自分の農地を回復させよう」という思いで、農家さんの声を聞きに全国を回り始めました。そこで、自身の両親と同じく「農業は子どもに継がせたくない」という農家の言葉に出会ったのです。「農家のこだわりが正当に評価される世界を作りたい」と、起業して「食べチョク」を立ち上げました。

農家と消費者を直接つなぐオンライン・マルシェ「食べチョク」。「食べチョク」では、基準を満たすオーガニック農家であれば誰でも無料で出品者登録ができ、1箱から農作物を出品できます。農作物を出品し、サイト上で注文が入れば、お客さんに向けて発送。生産者と消費者が直接つながることができるため、通常流通しない農作物も販売することができるといいます。

 

オンラインマルシェ「食べチョク」

 

「農家さんと一緒に新しい流通をつくりあげていきたい」という秋元さん。家族とのエピソードから生まれた決意は、会場参加者の胸を打ちました。

 

オンラインの産直市場「ポケットマルシェ」でお客さんと直接つながろう

最後に登壇したのは、オンラインの産直市場「ポケットマルシェ」の生産者パートナー中山 拓哉さん。もともと外資系の大手IT企業に勤めていた中山さん。
「自分の仕事に価値はあるのか?」そんな思いで退職してしまったといいます。自分が作ったサービスで、本当にお客様に喜んでいただけているのか、実感できなかったのです。

退職後に出会ったのが、富山県のある米農家。「自分が一生懸命育てたお米も、誰が食べたかわからない」という言葉に共感し、農業を志しました。生産者さんのもとを巡るなかで、ポケットマルシェで働くことに。

 

photo by aiko hamada

 

農家・漁師のみが出店するオンラインマルシェ「ポケットマルシェ」では、消費者と直接会話しながら、食材を販売することができます。日本全国の多様な食材約2000点が、常に出品されている状態です。

注文が入ると、運送会社のドライバーが自動で伝票を届けてくれたり、出品や問合せ対応など、全ての業務がスマホで完結したりするなど、忙しい農家でも挑戦できるような仕組み。出品方法が分からないときは、中山さんを始めとした、生産者パートナーに相談することも可能です。

 

オンラインの産直市場「ポケットマルシェ」

 

「一緒に、直接お客さんとつながる社会をつくりましょう」と中山さんも会場に呼びかけ、締めくくりました。

アワードの最後には、登壇者と参加者全員で記念撮影。会場の一体感と農業の未来を感じさせました。

登壇した3社のほかにも、IT農業系サービスは多数存在します。できる.agriでも、「農業サポーターズ・ツアー」や「カオスマップ」などで、農業系ITツールのご紹介を進めて参ります。ぜひご参加・ご活用ください!

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